農業は「公益事業」である

「非営利株式会社」という存在がある。非営利株式会社は、端的に言えば、非営利と営利のハイブリッドで、良いところ取りをしている。世界では注目度は高いが、日本はこれからの法人形態だ。その特徴は、私見を交えていえば、次の通りだ。

  1. 利益は追求すれど、株主への配当はしない
  2. 剰余金は内部留保し社会課題解決のために投資する
  3. かかわる人全てが共通の目標達成を目指す
  4. 副業や兼業、ボランティアを積極的に受け入れて地域の関係人口を増やし、多様なプロフェッショナルを地域に呼び込む
  5. 事業目的の公益性、そして事業方針の決定や資金調達の迅速性を併せ持つ

つまり公益性を担保しつつ、株式会社の迅速な意思決定と事業運営で地域の社会的課題の解決に取り組むというものである。

有機農産物の専門流通団体「大地を守る会」は、1977年に事業部門として株式会社大地を設立した。

大地は、消費者会員が作る地域グループによる有機農産物の共同購入という事業スタイルに挑戦していた。消費者会員は、1株(1株5千円)以上の株主になることを条件とし、すべての株主に対して利益が出ても配当はせず、剰余金は有機農業を拡大することに投資すると宣言した。

今でこそ有機農業は、土壌の炭素貯留効果を増大させ、農薬不使用による生物多様性の保全効果が高く、社会課題解決型事業として評価されるようになっている。

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tokuemichiaki

徳江 倫明(オーガニックフォーラムジャパン会長)

1951年熊本県水俣市生まれ。78年「大地を守る会」に参画、有機農産物の流通開発を行い、88年日本初の有機農産物の宅配事業「らでぃっしゅぼーや」を興す。その後オーガニックスーパー、有機認証機関の設立などを手がけ、環境と食の安全をテーマにソーシャルビジネスの企画開発に挑戦し続けている。現在は(一社)フードトラストプロジェクト代表理事、生産と販売を繋ぐ“東京産直オフィス”FTPS株式会社を運営。

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キーワード: #農業

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