途上国の貧困解決のため先進国はODAで多額の援助をつぎ込み、NGOも草の根で支援を続けている。しかし、一向に、その効果が現れない。途上国政府要人の腐敗や支援される人々の援助漬けが問題視されるなか、注目されているのが貧困層を対象にしたBOPビジネスだ。所詮は金もうけとの批判もあるが、貧しい人々を消費者としてではなく生産者、販売者として市場に巻き込む手法は可能性に満ちている。この分野に詳しい野村総研主任コンサルタントの平本督太郎氏に聞いた。(聞き手・CSRtoday編集長=原田勝広)

原田 世界で40億人といわれるBOP層を対象にするビジネスの意味は?
平本 欧米のグローバル企業もそうだが、これまでターゲットは富裕層だった。貧困層はパートバーですらなかった。しかし、現実を見ると違う。ケニアのナイロビ近郊にキベラという200~300万人規模の大規模スラムを訪ねたら、皆、携帯電話を使っている。BOP層相手ではお金にならないと思うかもしれないが、実はITなどいろんな製品を使っている。
原田 ちょっと驚きました。一口にBOP層といっても様々ですね。
平本 そうです。BOP層をトップ、ミドル、ボトムの3層にわけると、それぞれが10億人強だが、トップは年収が37~146万円もある。
これはインドの年収93万円の世帯だが、日本でいうマンションに住み、部屋にはソニーのオーディオがあり、ショッピングモールで買い物をしている。ボトムまで含みBOP層は多様な消費活動をしており、領域によっては先進国の人々以上の支出をしている。
もっともBOPペナルティのせいで銀行が少ない、水道代が高い、薬が高額といった側面もあり、BOPビジネスの出番がここにある。
原田 可能性に満ちていることはわかったが、実際に利益はあがっているのか。
平本 ケニアのサファリコム(ボーダフォン)は同国の携帯電話の市場の7割を占め、売上高1880億円、純利益300億円。インドのヒンドゥスタン・ユニリーバ(ユニリーバ)は同国最大の生活用品メーカーで、売上高5207億円、純利益675億円となっている。
■ 15のビジネスモデル