■ アフリカ案件、相談が殺到

原田 日本企業のBOPビジネスは、5、6年で欧米企業に追い付けるか?
平本 難しいかもしれないが、是非そうなってほしい。ただ、経営者がアフリカなど新しい市場に注目し始めているのは間違いない。実は当社にも、最近、アフリカ案件に関する相談が殺到している。
しかも来月に結果がほしい、すぐに進めてくれといった感じで、急ぎの相談が多い。急に売り上げが伸びたとか、優良案件が舞い込んできた等の状況で悩んでいる状態。
原田 本当?具体的に聞きたい。
平本 例えば、メーカーなどはこれまでは代理店を通じてアフリカで細々売っていたところ、製品が急に売れ出し、ディーラー任せだったアフターサービスが間に合わなくなっている。もっとしっかりした整備体制が必要になっているわけです。
また、M&A絡みで、「アフリカのこの事業部門を買ってくれ」「わが社といっしょにやらないか」といった話が舞い込み、アフリカ戦略の練り直しを迫られ始めている。アフリカのBOPビジネスを仕掛ける前に、ビジネスの本筋が勝手に動き始めているということ。
そして、アフリカ市場ではBOP層が市場の中心を担ってきた産業が多いため、通常のビジネスの検討をしていてもBOP層がステークホルダーとして現れることが多い。
こうなると、経営者もビジネスとBOP層との接点を意識せざるを得ないし、BOPビジネスを経営戦略にどう組み込むか考えざるを得ないだろう。
原田 経済産業省やJICAが政策的に引っ張ってきた感もあるBOPビジネスだが、今度は実体経済と結び付くことで本格的に動きだすかもしれない。CSRを意識したものではなく、本業の近くに位置付けられるものになるかどうか、BOPビジネスも正念場を迎えたといっていいですね。
プロフィール:平本督太郎(ひらもと・とくたろう)
株式会社野村総合研究所公共経営コンサルティング部主任コンサルタント。専門はBOPビジネス、アフリカビジネス、PPP戦略、CSR戦略策定。経済産業省BOPビジネス支援センター運営協議会委員。明治大学特別招聘教授。
<インタビューを終えて>
BOPビジネスはソーシャルビジネスやインクルーシブビジネスとほぼ同義だと考えている。違いは企業が利益に比重を置くのに対し、国連やJICAは開発の側面を重視する点。今回のインタビューではBOP層といっても3層あるという説明は「目からうろこ」だった。Top層をターゲットにすれば企業は入って行きやすいのではないか。アフリカに関する相談が増えている最近の動向と思い合わせると、日本企業にも遅ればせながら、「アフリカBOPビジネス」の波が押し寄せてきたようである。