
日本の林業は、材価の低迷などにより厳しい時代を迎えて久しい。森林資源を木材という「部品」の生産だけでは、この先もよくなることはないだろう。少子化により日本の人口は減る一方だ。これから先、住宅などで木材の需要が一気に高まるということは考えにくい。そんな中、東京で林業を営む若い会社が、東京美林倶楽部という企画を打ち出した。会員となった個人にスギやヒノキの苗を配り、それを約30年かけて森へと育てていくというものだ。(NPO法人森のライフスタイル研究所=岩崎唱)
東京には森がないと思いがちだが、東京都の西端に位置し、山梨県と境を接する奥多摩町や檜原村は、森林率がそれぞれ94%、93%と驚くほど高い。実際に足を運んでみると、都内とは思えない豊かな森林がある。地形も急峻だ。奥多摩町、檜原村の東に位置する青梅市は、江戸時代から青梅林業地と呼ばれていた。本格的な人工林経営は明治時代に入ってからとのことだが、江戸時代は薪や炭、足場丸太、小角材などの小径材を江戸に提供していた。
檜原村も今ではスギ、ヒノキの人工林が目立つが、かつては広葉樹の森林に囲まれ、木炭の一大生産地と栄えていた。青梅市の北側、埼玉県の飯能市周辺の荒川支流、入間川、高麗川、越辺川の流域は西川林業地と呼ばれ川を利用して伐った材を筏に組んで江戸に出荷していた。こうしてみると東京の西側は、森林が豊かで、林業が盛んに行われていたのがわかる。
さて、西多摩郡の檜原村で林業に情熱を燃やす男たちと女たちがいる。青木亮輔さん率いる東京チェンソーズは、10年前に東京都森林組合に「緑の研修生」として入ったIターンの若者たちが、よりよい林業、安定して働ける林業を目指そうと作った会社だ。4人でスタートし、現在では14名のスタッフで育林・造林から素材生産までの仕事をこなす。