「事実誤認、誤ったことがいっぱい書いてある」。14日に福井地裁が下した、関西電力高浜原発3・4号機の運転差し止めを認める仮処分決定について、原子力規制委員会の田中俊一委員長は翌日の会見でこう批判した。ところがその中身を見てみると、いずれも「重箱の隅をつつく」、あるいは根拠があいまいな指摘であることがわかる。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
■「事実誤認」は揚げ足取り?

会見で田中氏は、決定文の事実誤認に当たる点として、使用済み核燃料プールの給水設備が「(耐震クラスが)Bだと書いてありますけれども、これはSクラスです」と指摘。また、「外部電源は商用ですからCクラスだが、 非常用電源はSクラス」「(決定書で)入倉先生の引用がありますけれども、入倉さんはそんなことはありませんと他で語っているようですので」などとも述べた。
使用済み核燃料プールの給水設備は田中氏が言う通り、最も厳しいSクラスであり、決定文におけるBクラスとの表記は誤りだ。
しかし決定文を読むと、使用済み核燃料プールの「冷却」設備がBクラスであり(42ページ)、しかも同プールへの給水が不可能となれば、全交流電源喪失から2日あまりで使用済み核燃料が露出し始める(43ページ)、と指摘している。
使用済み核燃料は、プールでの給水と冷却のいずれにも失敗して露出すれば、自ら発する崩壊熱で損傷して「死の灰」を放出する危険性がある。決定では新規制基準の不備を指摘しつつ、これらの脆弱性の解消を関電に求めている。その点を踏まえれば「給水」は「冷却」の誤記と分かるのだが、田中氏は話の本筋には踏み込まず、いわば「揚げ足取り」をしている形だ。