記事のポイント
- カリフォルニア州議員がドジャーズに石油会社とのスポンサー契約の解除を促した
- 化石燃料企業とのスポンサー契約は「スポーツウォッシング」と批判されている
- 環境活動家や地域住民らを中心に、契約打ち切りを願う2万3千の署名が集まった
カリフォルニア州議会の上院議員が、ロサンゼルス・ドジャーズのオーナーに対し、石油・ガス会社とのスポンサー契約を打ち切るよう強く求めた。化石燃料企業とのスポンサー契約は「スポーツウォッシング」として問題視されている。山火事被害もあり気候変動に対する危機意識が高まる中、ドジャーズに石油会社スポンサーとの契約打ち切りを願う署名は2万3千件集まっている。(オルタナ副編集長=北村佳代子)

マイクを持つのは、署名活動を率いるザン・デュビン氏
(c) Zan Dubin
ドジャースタジアムでは、オレンジ地に青色で「76」と書かれたロゴが大きく目立つ。これは、米石油大手フィリップス66のグループ会社で、ガソリンスタンドをチェーン展開する企業のロゴだ。フィリップス66はドジャーズの主要スポンサー企業だ。
このスポンサーシップが、「スポーツウォッシング」として問題視されている。「スポーツウォッシング」とは、国や団体、会社、個人などが、スポーツを利用して自身のイメージを向上させようとしたり、問題を覆い隠そうとしたりする、スポーツを介したグリーンウォッシュを言う。
米・自然保護団体のシエラクラブ・ロサンゼルス支部は「化石燃料に反対するドジャーズファン」という署名運動を展開し、3月11日現在、2万3000件の署名を集めた。
「多くの人に愛されるスポーツと大手石油会社との結びつきは、化石燃料が健全であるように見せかけ、化石燃料が引き起こす致命的な汚染と気候変動を軽視することになる」と運動家らは主張する。
地元ロサンゼルス・タイムズ紙は3月12日、記事の中で「ドジャーズファンがなにげなくSNSに投稿する写真に、このロゴが写っていると、それは多くの場合、フィリップス66を無料で宣伝することでもある」と問題提起した。
参考記事:米ドジャーズに化石燃料企業のスポンサー、市民から批判も
■フィリップス66は加州が提訴した企業
カリフォルニア州のレナ・ゴンザレス上院議員は、ドジャーズが大手石油会社からのスポンサーシップ契約を続けていることを問題視し、ドジャーズのオーナーに、契約打ち切りを促す書簡を送った。
もっとも、この書簡に法的強制力はない。あくまで、化石燃料企業とのスポンサーシップを断ち切るかどうかは、ドジャーズのオーナーであるマーク・ウォルター氏の判断にゆだねられている。
署名活動を率いるザン・デュビン氏は、オルタナの取材に対し、「ゴンザレス上院議員は私たちの取り組みを受け入れ、支持してくれた最初の公職者だ。化石燃料産業に対してだけでなく、愛すべきワールドシリーズチャンピオンの野球チームに対しても疑問を呈した彼女のリーダーシップと揺るぎない勇気に敬意を表する」と答えた。
「ゴンザレス議員の言うことは正しい。再エネの導入をさらに加速し、そしてそれを阻止しようとする化石燃料産業の政治的権力を打ち砕くためにも、このようなグリーンウォッシュは終わらせなければならない」(デュビン氏)
ゴンザレス上院議員は、最近発生したロサンゼルス郡の山火事は、化石燃料による汚染が気候危機だけでなく、地域の持続的な大気汚染の原因でもあるという事実を浮き彫りにしたとも述べた。
カリフォルニア州は、気候変動による被害について、フィリップス66を含む大手石油・ガス会社5社を提訴している。州当局は、石油業界が地球温暖化の真実を隠し、クリーンエネルギーへの移行を遅らせるために「数十年にわたって欺瞞のキャンペーン」を展開していると非難する。

■時代の先駆者としてのドジャーズに期待も
ドジャーズは、アメリカのスポーツ界の歴史の中でも、常に時代の先端を走ってきた。
1940年代には、アフリカ系アメリカ人のジャッキー・ロビンソン選手と契約を結び、野球界での人種差別撤廃の先駆けとなった。1960年代には、ドジャースタジアムでのタバコの広告を禁止した。
最近では、サステナビリティの取り組みにも注力し、試合観戦に公共交通機関を利用するようファンに呼びかけるほか、リサイクルの取り組みなども支援する。
自らを「ずっとドジャーズファン」だと称するゴンザレス上院議員は、こうしたドジャーズの歴史にも触れながら、「大手石油会社との間で続く契約関係は、ドジャーズを時代遅れにする」と評した。
そしてロサンゼルス・タイムズ紙のインタビューには、「大谷翔平選手やフレディー・フリーマン選手など、球団の選手が『自分たちにとっても重要な問題だ』と言ってくれたら嬉しい」と語った。
■議員が送った書簡の全文(和訳)は以下