記事のポイント
- Jリーグ加盟の58クラブは「シャレン!」という活動に取り組む
- クラブ、自治体、企業など3者以上が連携して、社会問題の解決を目指す
- 健康改善や地域活性化、少年院の更生支援などその取り組みは多彩だ
Jリーグは「シャレン!」という名称の社会問題の解決を目指したプラットフォームを運営する。Jリーグに加盟する*58クラブが自治体や企業などと連携して、各クラブが拠点を構える地域課題などの解決に取り組む。高齢者の健康改善や地域活性化、少年院の更生支援など、その取り組みは多彩だ。(オルタナ副編集長=池田 真隆)
*Jリーグには60クラブ加盟していますが今シーズン昇格した新加入の2クラブを除く

シャレン!は社会連携の略称だ。各クラブが社会問題を解決するために、企業、学校、行政、NPO、住民などと協働して行う活動を指す。シャレン!は「Jリーグを使おう」をコンセプトに掲げ、2018年から始めた。
公式サイトで、Jリーグや各クラブと協働で取り組みたい企画を公募し、毎年5月に実施した活動を表彰する。
Jリーグは1993年の発足当初から加盟クラブには、地域貢献や環境保護などを行う「ホームタウン活動」を義務付けてきた。地域との接点を持ちながら発展することを重要視してきたのだ。
今では、このホームタウン活動はJ1などに所属する主要クラブ合計で年間2万5千回を超す。ホームタウン活動は、クラブと支援先の二者間の関係性だったが、シャレン!ではクラブ、企業、自治体など3者以上が連携して社会課題の解決に取り組む。連携して課題を解決することで、クラブの非財務的価値を高める取り組みだ。
■合同企業説明会で採用の悩みを解決へ
地域の中小企業が抱える悩みの一つが採用だ。鹿島アントラーズは、この課題に目を付け、合同企業説明会を開いた。
鹿島アントラーズは「地域創生」を掲げた会員制組織を運営しており、その会員企業とファン・サポーターとのマッチングを図った。ホームゲームの試合日に、スタジアム近辺で合同企業説明会を開いた。

一般的な転職フェアとは異なり、企業の採用担当者たちは鹿島アントラーズのユニフォームを身に着けた。参加者も、試合観戦も楽しみに来場したので、普段応援する格好で参加した。
説明会には、約20社の中小企業が出展し、自治体担当者による移住・定住の相談窓口も設けた。地域企業の人材の確保と移住促進、将来的な地域経済の発展を狙った。
■FC東京は少年院院生に職業体験も
FC東京は2016年から東京都八王子市にある多摩少年院の院生向けに更生支援を行う。練習拠点の小平グラウンドでの職場体験や選手らが少年院を訪れ、夢をテーマに講演する。
昨年11月にはFC東京で活躍した石川直宏CG(コミニュティジェネレーター)らが多摩少年院を訪問した。2日間に渡り実施したプログラムでは、ワークショップなどを通して、院生らと夢を語り合った。

FC東京と協働して、このプログラムを行うのは京都市にある一 (イチ)という会社だ。同社の中馬一登社長は、「罪を犯した少年少女の支援は、社会課題の中で最も光が当たりにくい分野の一つ。FC東京さんの勇気ある挑戦のおかげで、日本の少年院では前例のない取り組みが実現したことに、心から感謝している」と話した。
■スタジアムでの「声出し」で健康改善へ
モンテディオ山形は、スタジアムでの応援を通して、健康改善を目指す。背景にあるのは高齢化だ。特に山形県は全国で5番目に高齢化が進む地域だ。
そこで同クラブは60歳以上を対象にした、会員組織「O-60モンテディオやまびこ」を立ち上げた。発声を通して健康改善を行う会社と連携し、スタジアムでの応援を通して健康改善に取り組む。

その他、サンフレッチェ広島は昨年1月に完成した新スタジアムを軸に地域活性化に取り組む。大分トリニータは、ホームゲームで行う地域企業や大学などとのイベントの効果を定量化するため、SROI(社会的投資収益率)の検証を実施した。
Jリーグとしては、各クラブのシャレン!の取り組みを表彰する「シャレン!アウォーズ」を5月19日に開く。