記事のポイント
- 世界のCO2排出量の5割は、36社の化石燃料企業に起因する
- 英シンクタンクが石炭や石油を掘削・生産する180事業者を調べた
- 「ごく少数の企業が気候変動に甚大な影響を及ぼしている」と研究者
英・非営利シンクタンク「インフルエンスマップ」はこのほど、2023年の世界のCO2排出量の5割超が、36社の化石燃料企業に起因していることを明らかにした。石炭や石油、天然ガス、セメントなどの掘削・生産にあたる180事業者を調査した。同団体の研究者は、「ごく少数の企業が気候変動に甚大な影響を及ぼしている」と指摘した。(オルタナ編集部=松田 大輔)
英ロンドンに拠点を置く非営利シンクタンク「インフルエンスマップ」は、エネルギーに関連するCO2の排出源について調べたレポートを公表した。石炭や石油、天然ガス、セメントなどの掘削・生産にあたる世界の180事業者を対象に分析した。
レポートによると、化石燃料企業36社が、2023年に200億トン以上のCO2を排出していたことが分かった。国際エネルギー機関(IEA)は、2023年の世界のエネルギー関連のCO2排出量を374億トンと報告しており、36社の排出量だけで全体の5割以上に相当する。
36社とは、サウジアラビアの国有石油会社サウジアラムコやコール・インディア(インド)、エクソンモービル(米国)、シェル(英国)などだ。
同レポートは、2023年にCO2排出量が多かった企業のリストも公開した。現在事業を行っている169社を対象にしたもので、日本企業でリストに入ったのは、三菱商事(76位)、INPEX(90位)、太平洋セメント(157位)の3社だった。
レポートを作成したインフルエンスマップのダン・ヴァン・アカー・ファイナンスマップ・投資家エンゲージメント・ディレクターは、「このデータは、ごく少数の企業が気候変動に甚大な影響を及ぼしていることを明らかにした」とコメントした。

同レポートの特徴は、各国の企業ごとの排出量をまとめることで、企業活動と気候変動の関連性を鮮明に浮かび上がらせた点だ。インフルエンスマップは2013年から調査を続けており、データは気候変動対策のための資金要求や気候関連訴訟などで活用されている。
今回のレポートでは、排出量上位20社のうち、8割をサウジアラビアや中国、インドなどの国営企業が占めたことも明らかにした。各国政府の責任も浮き彫りにした形だ。
同団体のエメット・コネア・シニアアナリストは、「本報告は排出源の特定と責任追及の基盤を提供するものであり、企業の説明責任を促す重要なツールだ」と指摘した。