記事のポイント
- 雪印メグミルクは4月から「健土健民」をパーパス(存在意義)に掲げる
- 健土健民は創業の精神であるが、「社会課題を解決する精神」と捉え直した
- 「たんぱく質クライシス」など食の持続性に取り組む
雪印メグミルクは4月から「健土健民」を自社のパーパス(存在意義)に掲げる。「健土健民」は同社の創業の精神であるが、「社会課題を解決する精神」として捉え直した。世界の人口増加によってたんぱく質の需要が供給を上回る「たんぱく質クライシス」など食の持続性に取り組む。(オルタナ副編集長=池田 真隆)

雪印メグミルクグループは、2025年5月に創業100周年を迎える。そのタイミングで、パーパス(存在意義)や企業ロゴ、コーポレートスローガンを刷新する。
パーパスには、同社の創業の精神である「健土健民」を掲げる。「健土健民」は、同社の創業者の一人である黒澤酉蔵氏が提唱した言葉だ。
「酪農は大地の力を豊かにし、その豊かな大地から生み出された牛乳・乳製品は、最高の栄養食品として健やかな精神と強靭な身体を育む」ということを意味する。当時(1925年)の社会課題であった「安定的で豊かな食生活の実現」に挑むという意味合いもあった。
今回、「健土健民」をパーパスに掲げるが、創業当時の意味に加えて、「社会課題を解決する精神」として捉え直した。世界の人口増加によってたんぱく質の需要が供給を上回る「たんぱく質クライシス」など食の持続性に取り組む。
■「たんぱく質クライシス」、早ければ今年にも
「たんぱく質クライシス」が現実化しつつある。早ければ2025年~2030年頃には、たんぱく質の需要が供給を上回る可能性が指摘されている。
この危機を回避するには、従来の肉や魚、牛乳・乳製品に加えて、新たなたんぱく源を確立する必要がある。植物性たんぱく質、昆虫たんぱく質、藻類たんぱく質などの「代替たんぱく質」に関する研究開発や商品開発が進められている。
■人口増によって乳製品の需給はさらにひっ迫へ
日本の食料自給率はカロリーベースで38%と、先進国の中でも非常に低い状況にある。海外からの調達が困難になれば、必要な食料を確保できなくなるリスクがあり、酪農乳業界もこのリスクにさらされている。
日本国内の牛乳・乳製品の需要は、生乳換算で年間約1200万トンとされているが、その約40%は輸入に依存している。
一方、世界の乳製品の需給状況を見ても、世界の生乳生産量約9億トンのうち、輸出に回るのはわずか1割以下に過ぎない。世界人口の増加を考えると、乳製品の需給は今後さらにひっ迫していくことが懸念されている。