記事のポイント
- 米ミネソタ州は、米国で初めて、PFASを使用した調理器具の販売を禁止した
- ティファールなどが加盟する業界団体は、禁止令をめぐって州を提訴している
- 一方で、PFASを使わずに焦げ付き防止加工に取り組む企業も出てきている
米ミネソタ州は米国で初めて、PFASを使用した調理器具の販売を禁止した。この禁止令をめぐって、ティファールなどが加盟する業界団体は、ミネソタ州を提訴した。一方、PFASを使わずに焦げ付き防止加工に取り組む企業も出てきた。(オルタナ副編集長=北村佳代子)

PFASとは、有機フッ素化合物の総称で、1万種類以上の物質があるとされる。水や油をはじき、熱に強く、腐食に対する耐性があることなどから、調理器具の焦げ付き防止のほか、衣料品の防水・撥水加工、化粧品、半導体など、数千もの製品に幅広く使われている。
一方で、自然界でほとんど分解せず、生物の体内に蓄積することから、「永遠の化学物質」とも呼ばれ、環境破壊や発がんリスクなど人体への影響が指摘されている。そのことから、欧米を中心にPFAS規制が進む。
■調理器具へのPFAS規制は今後も広がる
米ミネソタ州は2025年1月から、PFASを含む11種類の消費者向け製品の販売を禁止した。調理器具以外にもデンタルフロス、カーペット、バギーなどの子供向け製品などが対象となったが、フッ素加工の調理器具を禁止したのは米国でも初のケースだ。
この動きは今後も広がると予想される。2026年からコロラド州、メイン州、バーモント州の3州がミネソタ州と同様の禁止令を施行するほか、2027年にはロードアイランド州、その翌年にはコネチカット州でも同様の対応が始まる。
ミネソタ州がPFAS規制に積極的なのには理由がある。
同州に本社を置く化学メーカー、3M(スリーエム)は、PFAS汚染をめぐって個人や州政府からの訴訟問題に発展していた。同社は2022年12月、 2025 年末までにPFAS製造から完全撤退する方針を公表し、2023年には水質汚染訴訟に関して、公共水道事業者に103億ドル(約1.5兆円)を支払うことで和解している。
■調理器具の業界団体は州を提訴に
米国では毎年40億ドル(約6000億円)の調理器具が販売されている。そのうちの約3分の2近くを、「テフロン加工」など、PFASの一種を使ったフッ素加工のフライパンや鍋が占める。
ミネソタ州の禁止令をめぐって、業界団体クックウェア・サステナビリティ・アライアンスは2025年1月、州を提訴した。この業界団体には、ティファール、サーキュロン、オールクラッドなどの調理器具ブランドが加盟する。
■問題は「使用時の安全性」ではない
業界団体の主張は、鍋やフライパンの焦げ付き防止加工に使用するPFASの一種・ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は、食品医薬品局(FDA)によって安全性が認められているというものだ。
しかし科学者らは、鍋やフライパンが埋立地に廃棄された後に、化学物質が飲料水に混入する可能性があると指摘する。
業界団体は、PTFE分子は通常の使用では水に溶けないと異議を唱えるものの、科学者らはフライパンが過熱するとPTFEが蒸気を発生させ、呼吸器疾患の病気を引き起こす可能性があると主張している。
実際、「テフロン」を製造するケマーズ社のウェブサイトには、PTFEの微粒子によって、鳥類が病気になったり死んでしまったりする可能性があるとして、ペットの鳥をキッチンに入れないよう警告している。ただし人間には「ほとんど、あるいはまったく影響がない」とも記載している。
■PFASに代わる対応に取り組む企業も