キリンがカーボンクレジット方針、コベネフィットを選定軸に

記事のポイント


  1. キリンホールディングスは3月24日、カーボンクレジット方針を策定した
  2. 活発化するクレジット市場では、ジャンククレジットが問題視されている
  3. 同社は「コベネフィット(共通便益)」をクレジットの選定軸に置いた

キリンホールディングスは3月24日、「カーボンクレジット方針」を策定した。カーボンクレジット市場は盛り上がりを見せるが、削減効果を示すデータの信頼性が問題視されている。同社は、削減効果に加えて生物多様性保全にもつながる「コベネフィット(共通便益)」を、クレジットの選定軸に置いた。(オルタナ副編集長=池田 真隆)

カーボンクレジットとは、温室効果ガス(GHG)の削減効果をクレジットとして売買できる仕組みを指す。売り手は、植林や省エネ効果の高い危機の導入などによってGHGの吸収・削減した量をクレジットとして発行できる。GHGを削減したい企業がそのクレジットを購入し、自社の排出量から相殺する仕組みだ。

カーボンクレジット市場は盛り上がりを見せるが、削減効果がない低品質のクレジットも出回っており、信頼性が問われている。低品質のクレジットを利用した企業は、「グリーンウォッシュ」の烙印を押されることになる。

残余排出量対策としてクレジット利用へ

サステナX

こうした状況を受けて、キリンはグループ全体に適用するクレジットの選定基準を策定した。特に同社では、「残余排出量」対策として方針を設けた意味合いが強い。残余排出量とは、自社のサプライチェーン内では削減しきれないGHG排出量を指す。

同社は、SBTイニシアティブによる「SBTネットゼロ認定」を世界の食品企業として初めて取得した。この目標の達成に向けて、スコープ1~3のGHG排出量については自社努力による削減を優先して行う。どうしても残ってしまう残余排出量を、クレジットでオフセットする狙いだ。

今回、同社が策定した方針では、「コベネフィト(共通便益)」を重視した。コベネフィットとは、カーボンクレジットを利用する際、生物多様性保全や地域課題の解決に寄与しながら排出量の削減につながるアプローチだ。コベネフィットに実現しているか自律的に確認できるチェックリストも作成した。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナ輪番編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナ輪番編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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キーワード: #生物多様性#脱炭素

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