記事のポイント
- 米トランプ政権は、米国外企業に対しても「反DEI」を推進している
- 欧州では、各国の米国大使館経由で、企業にDEI施策の中止要請が送られた
- 仏政府閣僚は米国の要請は「行き過ぎで容認できない」と反発した
米トランプ政権が、米国外の企業に対しても「反DEI(多様性、公正性、包摂性)」を推進しようとしている。フランスやベルギーなどで、企業に対し米国大使館経由で、DEI施策を中止するか、中止しない場合その理由を説明することを求める文書を送った模様だ。これに対し、フランス政府閣僚は、トランプ政権の要請は行き過ぎで容認できないと、反発した。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

米トランプ政権が、反ESGや反DEI(多様性、公正性、包摂性)を推し進める中、米国内の一部企業では、これまで進めてきた「DEI」施策を後退させる動きも出てきている。
そのような中、3月末には、フランス、ベルギー、イタリア、スペイン、イギリス、デンマークなどで、米国外企業に対してDEIの取り組みを中止するよう求める文書を、米国務省が各国に駐在する米国大使館経由で送っていたことが明らかになった。
米国政権のこの動きは、世界中の大学、企業、政府請負業者、セキュリティサービスを標的にしているとポリティコ紙は報じる。日本でも同様の通達を送付したのか、駐日米国大使館に問い合わせたが、現時点で回答は得られていない。
一方、欧州では、米国外にも反DEIを迫る動きが波及したことを、政府高官や企業代表らは強く非難した。
フランスのオーロール・ベルジェ男女平等担当大臣は、「多くのフランス企業はDEI施策を放棄するつもりはない。企業が社会のさらなる進歩や社会権の促進を妨げるということなどは、もってのほかだ」と、フランスのテレビ局BFM TVのインタビューに答えた。
またベルギーのヤン・ジャンボン副首相も、フランス語のテレビ局 RTL-TVi で、「欧州には差別をしない文化があり、それを継続していかなければならない。アメリカのボスから学ぶことは何もない」と反発した。
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