記事のポイント
- 米・西海岸発の「Allbirds」が、CO2排出ゼロのシューズを4月5日から発売
- 再生農業や再エネを活用し、クレジットを用いず実質CO2排出ゼロを実現した
- 気候変動対策のため製品ライフサイクルを公開し、業界全体の脱炭素を促進へ
米国・西海岸発のシューズ・ブランド「Allbirds(オールバーズ)」は4月5日、CO2排出量ネット(正味)ゼロの新シューズを日本で発売する。カーボンクレジットに頼らず、素材となる羊毛の選定から製造、輸送まで、ライフサイクル(LCA)全体でのCO2排出量の削減を徹底した。開発中に得たノウハウやCO2の測定ツールを他社にも公開し、シューズ業界全体の脱炭素化を促進する。(オルタナ編集部=松田 大輔)

オールバーズは、米国・西海岸サンフランシスコで2016年に創業したシューズ・ブランドだ。ミッションに「ビジネスの力で気候変動を逆転させる」を掲げ、生産から廃棄までのCO2排出量を示す「カーボンフットプリント」を公開する。20年には原宿店(東京・渋谷)をオープンした。
同社は4月5日から、東京・丸の内店でCO2排出量を実質ゼロに抑えた新シューズ「M0.0NSHOT Zero(ムーンショット・ゼロ)」を販売する。2月には米国や英国で先行販売し、ドバイ店では開店から数十分で完売した。世界で500足の限定販売で、日本では75足を販売する。
同社によると、従来のシューズは平均して14キログラムのCO2を排出する。業界全体では年間500億足を生産し、CO2排出量は7000億キログラムに上る。新シューズでは、素材の選定から廃棄に至るまで、製品のライフサイクル全体でCO2排出ゼロを実現した。
製造過程では再生可能エネルギーを導入。輸送では、船にはバイオ燃料を90%程度用い、陸地輸送では米国を中心にEVトラックの導入も進める。シューズを使い終えた後は店舗に返却することでリサイクルも可能だ。
シューズの主な素材は、ニュージーランド産の羊毛だ。同社が連携する羊牧場は、植林や土壌の再生といった再生農業の取り組みを通してCO2を吸収する。再生農業とは、土壌の健全性と肥沃度を高めて、水資源や生物多様性の保護を目指すものだ。
例えば、羊を特定のルートに誘導し、土を踏ませて植生に刺激を与える。結果として、土壌が肥沃になるとともに植物の成長も早まり、CO2の吸収量が高まるという。
日本での販売を手がけるゴールドウイン・Allbirds事業部の西田幸平部長は、「ニュージーランドの牧場のCO2吸収量は、牧場内の排出量の2倍に上る。シューズの製造や輸送、廃棄過程ではどうしてもCO2が排出されてしまうが、牧場での吸収量を考慮し、製品全体でオフセット(相殺)できるように設計した」と説明する。
羊のげっぷなどで生じるメタンも温室効果ガスの一種だが、米マンゴー・マテリアル社の技術を用いてメタンの有効活用にも取り組む。メタンに特定の微生物を介在させてバイオプラスチックに成形し、商品のロゴなどに活用する。
新シューズのもう一つの特徴は、気候変動対策のために、素材作りから廃棄まで製品のライフサイクルをオープンにした点だ。素材、製造、輸送、使用、廃棄における各工程を詳細に説明した「Recipe B0.0K」 やCO2の測定ツールを公開し、シューズ業界全体の脱炭素化を促進する。すでに数社から問い合わせがきており、今後は実際の協業も見込む。
同社の共同創業者であるティム・ブラウン・チーフ・イノベーション・オフィサーは、「シューズの開発まで12年以上かかった。サステナビリティを口約束だけでなく、行動を伴うものにしていきたいと考えている。ムーンショット・ゼロをサステナビリティの道しるべにしたい」と語った。