記事のポイント
- EU議会は主要サステナ規制のCSRDとCSDDDの実施に猶予期間を設けることを決議した
- CSRDは2年、CSDDDは1年、実施を延期する
- 企業にはその間、規制対応の強化を図るよう促す
欧州議会は、企業サステナビリティ報告指令(CSRD)と企業サステナビリティ・デューディリジェンス指令(CSDDD)の実施を遅らせることを決議した。CSRDは2年、CSDDDは1年、実施時期を延期する。企業にはこの猶予期間を活用して、サステナ関連規制に対応する体制強化を図るよう促す。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

欧州議会は4月3日、CSRDならびにCSDDDの実施を延期する「ストップ・ザ・クロック」指令案を、賛成531票、反対69票、棄権17票の圧倒的多数で可決した。企業に十分な時間的猶予を与えることで、規制対応のための体制強化を図るよう促す。
CSRDは、EU域内での企業のサステナ情報開示を強化するための法律だ。ESG情報の開示を義務付けることで、投資家をはじめとするステークホルダーがサステナビリティの観点からも意思決定できるように支援することが目的だ。
CSDDDは、多国籍企業にグローバルでのバリューチェーンで、持続可能な責任ある企業行動を促進することを目的とする。企業活動が人権や環境に与える負の影響に対処するためのデューディリジェンスを義務づける。
■規制対応を図る体制強化の機会に
欧州委員会は今年2月、CSRDやCSDDDなどの、EUにおけるサステナビリティ関連規制を簡素化するオムニバス法案を発表した。
オムニバス法案は、EUの目指すサステナビリティ目標を推進しつつ、特に中小企業のコンプライアンス負担を軽減することを目的としている。今回の「ストップ・ザ・クロック」指令案も、その動きに沿って提案された。
EUにおいて、サステナビリティ関連規制は、長期的に重要な優先事項であることに変わりはない。欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長も、オムニバス法案は「規制緩和」ではなく「簡素化」であると説明する。
今回のCSRDとCSDDDの実施延期についても、企業に対し、これまでの努力を一時停止する機会と捉えるのではなく、むしろデータベースの構築やガバナンス体制、ESG戦略の整合性などを強化する機会と捉えるべきだと強調した。
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■CSRDとCSDDDの実施スケジュールは