記事のポイント
- 2024年9月の英国に続き、欧州で石炭火力発電の廃止が相次ぐ
- フィンランドは2025年4月、同国最後の石炭火力発電所を閉鎖した
- スペインも2025年中の石炭火力を廃止する予定だ
欧州を中心に石炭火力発電からの脱却が相次ぐ。2024年9月末に産業革命発祥の地・英国が脱石炭を実現したのに続き、2025年4月にはフィンランドが、当初計画から4年前倒しする形で最後の石炭火力発電所を閉鎖した。OECD加盟国で石炭火力に頼らない国は15カ国になった。スペインも2025年中の脱石炭を予定しており、G7諸国の中で撤退を明言しない日本の姿勢が際立つ。(オルタナ輪番編集長=吉田広子、同・北村佳代子)

欧州を中心に、石炭火力発電からの脱却が相次いでいる。石炭火力発電に依存しないOECD加盟国はいまや15カ国に上る。
石炭火力は化石燃料のなかでも二酸化炭素(CO2)などの温暖化ガス(GHG)排出量が多く、地球温暖化の大きな要因となっている。 2024年9月には、産業革命の発祥の地である英国が、G7として初めて石炭火力からの脱却を果たした。それに続く形で2025年4月、フィンランドも同国最後の石炭火力発電所を閉鎖した。
参考記事:英国、石炭火力発電から離脱へ: 産業革命から250年ぶり
■フィンランドは脱石炭を4年前倒しで達成
フィンランドは2025年4月1日、1984年から稼働してきた同国最後の石炭火力発電所であるサルミサーリ石炭火力発電所を正式に廃止した。ヘルシンキに位置する同発電所の約150メートルの煙突は、その日、色付きの煙を吹き出し、同国の脱石炭を祝った。
この発電所の閉鎖により、2003年には同国で約23%を占めていた石炭火力による発電比率は2025年、1%未満に大減少する。
フィンランドは2019年に、2029年までの石炭火力からの脱却を発表していた。同国が4年も前倒しする形で脱石炭を実現した背景には、風力発電の拡大がある。現在、風力発電は同国の電力需要の4分の1を賄う。
2030年までに既存石炭火力発電の段階的廃止を掲げる脱石炭国際連盟(PPCA)のジュリア・スコルプスカ事務局長は、フィンランドの事例を「石炭からクリーンエネルギーへの移行加速が、エネルギー安全保障の強化と経済成長の促進の両面で自国の利益に合致することを示すもの」だと称賛した。
フィンランド政府は、法整備と投資政策を組み合わせ、2021年には革新的なエネルギー技術に約2280万ユーロ(約36.9億円)の予算を振り向けるなどして、脱石炭を推し進めてきた。
サルミサーリ石炭火力発電所を所有する同国電力大手のヘレン社のCO2排出量は、同発電所の閉鎖により前年比50%削減する。ヘルシンキ市の排出量も前年から30%減少する。 ヘレン社のオッリ・シルッカCEOは「私たちの成功は、クリーンな移行、コスト効率、フィンランドのエネルギー供給の安全性が両立可能であることを示すベストプラクティスだ」と力をこめた。
(この続きは)
■スペインも年内には脱炭素の見通し
■撤退法世親変えず、時期を調整する国も
■38カ国が30年までの脱石炭を約束する
■日本の「撤退明言しない」姿勢際立つ