アニマルウェルフェアアワード2025にシャトレーゼなど

記事のポイント


  1. 「アニマルウェルフェアアワード」にシャトレーゼやキユーピーなどが輝いた
  2. 同アワードはNPOが主催しており、動物福祉に力を入れた企業を表彰する
  3. 動物のストレスを減らした平飼いなどの飼育方法に切り替えた企業を評価する

認定NPO法人アニマルライツセンターは4月23日、アニマルウェルフェアアワード2025の受賞企業を発表した。自社で放牧養鶏に取り組み、平飼い卵の安定調達を目指すシャトレーゼ(甲府市)やケージフリー卵の市場拡大に寄与したキユーピーなどが輝いた。(オルタナ輪番編集長=池田 真隆)

アニマルウェルフェアアワードは、アニマルウェルフェア(動物福祉)に力を入れた企業を表彰するものだ。アニマルウェルフェアは、動物が精神的にも身体的にも健全である状態を指す。

英国では1965年にアニマルウェルフェアを実現するための要素として、「5つの自由」が必要だと提唱した。5つの自由とは、①飢えと渇きからの自由②不快からの自由③痛みや、怪我、病気からの自由④自然な行動をすることの自由⑤恐怖や苦痛からの自由――だ。

英国で生まれたこの概念は、アニマルウェルフェアを推進する際のグローバルスタンダードになった。各国はアニマルウェルフェア関連の法律を制定するときや基準を策定する際に参考にしている。

アニマルウェルフェアアワードでも、この概念に基づき、アニマルウェルフェアの推進に力を入れた企業を表彰した。「鶏賞」に、シャトレーゼとキユーピー、「豚賞」に香川県と徳島県で養豚場を経営する七星食品が輝いた。

「製菓業界にインパクトを与えた」

シャトレーゼは2024年に自社農場で、鶏の放牧・平飼いを始めた。同社は、その卵でプリンを製造し、「YATSUDOKI(ヤツドキ)」のブランドで販売する。

認定NPO法人アニマルライツセンターの岡田千尋代表理事は、「平飼い卵の安定調達と、中長期的に見た企業価値の向上を狙って、大手製菓企業が自社内で放牧養鶏に取り組んだことは、日本の卵業界や製菓業界にインパクトを与えた」と評価した。

キユーピーは2024年に欧米で使うすべての卵をケージフリーに切り替え、グローバルでは2027年までにマヨネーズに使用する卵を20%ケージフリーにする目標を掲げた。日本では2030年までにマヨネーズに使用する卵の20%相当量をケージフリーで調達することを目指す。

キユーピーが年間で調達する卵の量は、日本の年間生産量の10%に相当する。そんな同社がケージフリーの調達割合を引き上げたことの社会的インパクトは大きい。

日本では採用鶏の99%をケージで飼育しているが、ケージの平均面積は一羽当りアイパッド一枚分に相当する。動きが制限された環境では、ケージに足が引っかかり、骨折などの原因になっていた。

近年はアニマルウェルフェア(動物愛護)の観点から、ケージフリーへの移行が加速する。ユニリーバやネスレ、ヒルトン、マリオットグループなどのグローバル企業はすでにケージ飼育を止めて、平飼いに切り替えた。

欧州や米国では、ケージフリーの割合は50%を超えた。世界のケージ飼育の鶏の60%以上がアジアに集中するが、着実にケージフリーへの移行は進む。インドは22%、インドネシア12%に増えた。

七星食品、妊娠ストールフリーに切り替え

豚賞に輝いた七星食品では、アニマルウェルフェアの一環として、妊娠ストールフリーに取り組んできた。妊娠ストールとは、妊娠中の母豚を狭い檻(ストール)に拘束する飼育方法を指す。狭いストール内では身動きが自由に取れないためストレスを与えていた。

同社はこうしたことを問題視して、広い空間で群飼い(フリーストール)する飼育に切り替えた。岡田代表理事は、「七星食品の取り組みは、国内の中小養豚場にも刺激を与えた」と評価した。

M.Ikeda

池田 真隆 (オルタナ輪番編集長)

株式会社オルタナ取締役、オルタナ輪番編集長 1989年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。 環境省「中小企業の環境経営のあり方検討会」委員、農林水産省「2027年国際園芸博覧会政府出展検討会」委員、「エコアクション21」オブザイヤー審査員、社会福祉HERO’S TOKYO 最終審査員、Jリーグ「シャレン!」審査委員など。

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