IUCN(国際自然保護連合)が定義する「絶滅のおそれのある野生生物のリスト」には、2014年11月時点で約2万2千種が登録されている。生物多様性の確保は喫緊の事項だ。本コラムでは、味の素バードサンクチュアリ設立にも関わった、現カルピス 人事・総務部の坂本優氏が、身近な動物を切り口に生物多様性、広くは動物と人との関わりについて語る。(カルピス株式会社 人事・総務部=坂本 優)

私の勤務先は恵比寿の防衛研究所の近隣だ。防衛研究所は敷地が広大なうえに緑豊かで、夏は研究所の内外からのさまざまなセミの鳴き声で終日にぎわう。おなじみのミンミンゼミやアブラゼミ、ツクツクホウシなどの他、時折、地味な声ながら、ソロの隙間や合間を埋めるバックコーラスのように響くクマゼミらしき声もする。
ご承知のとおり、かつてクマゼミは、本州の中では南西部に分布し、関東地方には生息していないとされていた。それがここ数年の間に都内でも一挙に分布を広げた。まさに温暖化を体現するようなセミだ。