■天ぷら廃油で走る車に子どもが興味津々
次に、小屋の外に停められていた天ぷら油の廃油で走る大型車の説明が始まった。説明してくれたのは、兵庫県で阪神淡路大震災を、いわき市へ移住後に東日本大震災を経験したという同組合事務局長の島村守彦さん。
天ぷら油の廃油でエンジンが動く車の内部を見せながら、廃油を濾過する遠心濾過装置や天ぷら油をエネルギーに換える最適温度の40度まで上昇させる仕組みなど、科学実験教室の先生のように丁寧におしえてくれた。
それもそのはず、島村さんは子どもたちに次世代エネルギーを教える場面が多く、県内の小中学校やイベントに来てほしいという依頼が相次いでいるという。組合設立当初は「どうせ続かないだろう」と言われたこともあった。しかし、2度の大震災を経験した島村さんは「地域に希望の明かりを灯すのは原発ではなく、天然のエネルギーでありたい」との思いで、この活動をしている。

参加者は地元食材の米粉麺を、先ほどのコットン畑で育ったバジルのソースで食べる昼食をとった後、午後は太陽光パネル作りとコットンで作るモチーフ作りのワークショップを体験した。
地元から小学生の子ども2人を含む家族4人で参加していた坂本雅彦さんは、この体験会に参加した理由として「子どもたちが無農薬の畑でオーガニックコットンが育つ姿に触れたり、自然エネルギーを身近に感じたりして欲しかった」と語った。
体験会の参加者には、同組合が行うプロジェクトに自身も関わったことのある人のほか、オーガニックコットン製品のファンも多かった。製品は組合のネットショップ(http://shop.iwaki-otentosun.jp/)で購入できる。都内では六本木ミッドタウンの「WISE・WISE tools」や、外神田のギャラリー・アーツ千代田3331内の「オックスファム・ショップ」でも手に入る。
現在、組合では「おてんとファミリー」という活動のファンを募集している。いわき市好間町中好間地区で有機農業やオーガニックコットン栽培、再生可能エネルギー、ものづくり体験などの郷創りを共に進めていくというものだ。
「おてんとファミリー」には年会費の金額に応じて、年4回開かれる「エコひいきの会」へ招待されるなどの特典がある。会の紹介文には「自然を痛めつけ、エネルギーを潤沢に使い、豊富な物に囲まれる暮らしに溢れたこれまでの社会の有り様を、本来あるべき社会の姿へと自分たち自身の手で変えていく活動」とあった。
いわきおてんとSUN企業組合では、個人から企業まで幅広くボランティアが集まって、活動を通して生まれる「コミュニティのつながり」を楽しんでいた。魅力ある街づくりの根本には、そこに携わる人の魅力と、志に共感する緩やかで楽しい横の広がりによる部分が大きいと感じた。今後の展開が楽しみだ。