目的が違うこととはいえ、いかにして遺伝的に遠い個体を組み合わせるかに苦心する一方、同じ絶滅危惧種の動物につき、遺伝的に近いものを交配して特定の遺伝子を出現させようとする。
現在の地球上において、人間は他の生物から見たときには、生命を設計することもできる、造物主にも似た存在だ。家畜やペットは言うに及ばず、動物園の個々の生物のみならず、自然界の多くの種の存続が人間のコントロールのもとにある。
ホワイトタイガーは、太古から自然界に存在してきたものだ。しかし、現在ほどの比率で生まれてくることは従来あり得なかったろう。まさに白い体毛ゆえ、人の営為によって広がり、人の庇護のもと展示されている。

本コラムに掲載している写真は、都内の河川で私が観察していた白いスッポンだ。カルガモと比較するとご覧いただけるように、甲羅の長さ30cmほどの大型個体だ。数十年単位で生き抜いてきたのではないかとも推測される。専門の方にお聞きしたところ、「多分アルビノだろう。」とのことだ。
同じ川沿いの普通のスッポンに比べ、明らかに目立つ。天敵からも餌となる生きものからも気づかれやすかったことだろう。白いことによって、生存に有利なことはなかったのではないか。
今年9月の関東・東北豪雨のあと、この個体の姿も見かけない。しかし、この白い姿で、この体躯になるまで生き抜いてきた生命力を思えば、どこかで逞しく生きていることだろう。
