■地元に貢献しながら収益も生みたい
「この計画は2013年9月にスタートしました。海老名市のまちづくりを通じ、新規事業を創り出すことが目的でした」。リコーの新規事業開発本部新規事業推進センターに所属する「リコーフューチャーハウス」の中村英史ゼネラルマネージャーはこう語る。

リコーが海老名駅西口に同社最大の研究開発拠点「リコーテクノロジーセンター」を構えたのは、2005年のことだ。当時、開発が進んでいた東口に比べ、西口は農地が中心で、見えるのは同センターくらい。同センターの従業員5000人以上が通勤する場であり、海老名市に拠点を置く企業として地元の発展や成長に貢献したいと考えていたリコーにとって、駅前開発に参画することは当然の成り行きでもあった。
ただ、中村氏に課せられた使命は、地元に貢献しながらも収益を生む施設とすること。企業である以上、収益を生み出さなければ事業継続は不可能である。リコーにとっても地域住民の方々にとっても、「ウインウイン」であり続ける事業を立ち上げなければならない。その中で中村氏の頭に浮かんだのは、子どもたちの教育を中心に据えるというアイデアだった。

「子どもたちの理科離れ、数学離れはモノづくりで国を興してきた日本にとって、大きな問題。当社の基幹事業もモノづくりですし、社会貢献重点分野としても次世代育成を挙げています。ですから、単純な遊び場ではなく、学ぶ場を提供したいと思いました」
そこで中村氏は、自社のエンジニアを年代別に分け、どんな家庭で育ったか、子どもの頃は何に興味がありどのような遊びをしたかなどをくまなくリサーチした。同時に、海老名市の住民とも海老名をどのような街にしたいか、ディスカッションを繰り返した。
「予想以上にいろいろな収穫がありました。課題が認識でき、地域の皆様の希望も分かった。地元について教える人のことを『ジモティーチャー』と呼ぶというアイデアも生まれました」
■住民との議論でできた施設の3本柱