■住民ニーズに基づき午後9時閉館に

「コサイエラウンジは平日の放課後にオープンしていますが、閉館時刻を何時にするか、誰が子ども達に目を配るのかに悩みました」と中川氏。ラウンジの閉館時刻は午後9時と考えたが、一般的な学童保育と比べると遅い。子どもの自発的な学びを促進するため、親はラウンジに入室できないきまりともなっている。安全性確保を考えると、リコー側も簡単に首を縦に振れないところだろう。
しかし、地域住民とのディスカッションで職場が都内にある家庭が多いことが判明した。新宿まで電車で一本の海老名は都内への通勤圏内だが、学童保育の終了時間までに親が帰ってくることはそう容易ではない。
職場から多少遠くても、海老名で子育てをしたいという世代を支えることも重要であると中川氏は説き、最終的には午後9時閉館でまとまった。コサイエ運営チームも、「プロ・アマ問わず、子どもに関わった経験がある人」「一緒に海老名のまちを創る意識のある人」を基準に選んだ。
中川氏に、最後に今後の課題を聞いた。帰ってきた答えは「収益を上げること」。1階のカフェレストランでしっかり収益を生むことが重要だと語ったのち、こんなエピソードを披露してくれた。「先日、リコーフューチャーハウスの隣家の方がふらっとお越しになって、ご自宅で収穫した野菜を差し入れてくださったんです」
こうした交流があるのも、地域住民と共に施設をつくってきた成果だろう。今後は地域とのつながりを活かしながら、収益向上に結びつく仕掛けを打ち出したいという。
リコーの中村氏もUDSの中川氏も、リコーフューチャーハウスに託した想いは同じだ。「地域の皆様に愛される施設でありたい」、「この場所から、未来を拓く力を身につけた子どもたちを育てたい」。
次世代を育成することは最も難しいが、最も大切だと二人は口を揃える。長い時間がかかるからこそ、今やらなければならないのだとも。間伐材の机やテーブルがいい色に磨かれてくる頃、どれだけ多くの子どもたちがその能力を発揮しているだろうか。海老名はもとより、日本の未来を創る存在になっているだろうか。リコーフューチャーハウスの挑戦は、始まったばかりだ。