■「支援」ではなく、一緒に「新しい価値」を創る
東北復興支援において、不足している資源は、大きく分けると「人材」と「資金」である。福島県に拠点を置く三菱商事復興支援財団の中川剛之事業推進リーダーは、自社の取り組みとして岩手・宮城・福島の3県の被災企業 44社に対する投融資の事例を紹介した。
中川さんは当時、三菱商事という商社にとって、「本業を通じたCSR」は何かと悩まれたそうだ。その中で、地元企業に対して「寄付」ではなく「投融資」というかたちで協働することこそが商社だから出来ることではないかと考えた。

寄付ではなく投融資にしたのは、地元企業というお金を稼ぐ事業体に対して、「寄付」という支援方法に違和感があったからという。自社への見返りのために「投融資」としたわけではないことを証明するために、公益財団をつくり、そこにリターンが入るようにし、そのお金をさらに投資する形にした。
ヤフーは本業を通じた支援としてECサイトを活用している。東北の想いのこもった様々な商品を紹介する「復興デパートメント」を立ち上げ、2015年9月までの累計取扱高が8億2000万円までになった。パネリストの川邊健太郎副社長は、「人間というのは忘れてしまうものだ。経営者の役割として、可哀そうだから支援するとうスタンスではなく『忘れさせない』経営をすることが必要だと考えている。そのためにも、復興デパートメントは必ず黒字にする」と、決意を語った。
ETIC.の宮城治男代表理事は、中川、川邊両氏の発言を受けて、「支援する、支援されるではなく、プレーヤーとして一緒に取り組むのが、新しい企業と地域のパートナーシップ。このノウハウはどこの地域でも一緒に創っていける可能性があるのではないか」と強調した。
■企業はなぜ社会貢献に取り組むのか
昨今、企業の経営環境が厳しくなる中、なぜ社会貢献に取り組む必要があるのか。今回のシンポジウムでは大きく2つのポイントが浮上した。ひとつは、社会の前提条件が変化するとともに、日本や世界の未来のために企業の役割も変化しつつあるという点。もうひとつは、社会貢献は企業の人材育成のフィールドになるという点である。