■復興支援が人材を育てる
ロート製薬では、震災直後に社長が2時間で4000万円の資金の決済をし、すぐに被災地支援を始めた。河崎保徳広報・CSV推進部長は当初、株主から怒られるのではないかと考えたそうだが、実際は「よくやった。いい会社の株をもった」とエールを送られたという。

この取り組みを復興支援室だけの活動から広げる必要があると考え、社内では「ボランティア」という言葉を「友達」という言葉に変え仲間を募った。定期的に全営業所をまわって、朝礼で報告をすることも定例化した。その結果、多様な、社内でもエース級といわれる社員が現地に数年単位で勤務している事例もあるということだ。
最後にETIC.の山内さんが、「東北復興支援において企業の役割を見つけることが、人材を育成することにもなる。そんなスタンスが社員を勇気づけている。それぞれの『会社らしさ』『会社の強み』が社会の課題と合う点を見極め、独りよがりになっていないことが成果につながっていると感じた」とまとめた。
NPOなど地域で活動するソーシャルセクターは課題の発見は得意だが、課題解決へのスピード感は遅いのかもしれない。災害時の支援でも緊急救援という印象が一般的には強いだろう。一方、企業は社会課題の発見は専門ではないが、課題解決能力は高い。
ただ、復興では長期にコミットしていくことが重要であり、それが企業にとってはネックになるのも確かだ。企業が東北復興支援や地域創生に関わる目的は、事業の成果ももちろん大事だが、人材育成、組織活性化というような、既存の組織の中では育みにくくなっているものを、新たなフィールドで生み出せるという可能性も、検討してみる必要があるのではないだろうか。