まず一つ目は、マーケットサイズです。「エシカル」を前面に押し出すことで、確かにメディアにも取り上げもらえるかも知れませんし、ある特定のファンを獲得しやすくはなるでしょう。ただし、それでも「エシカルなものを買う」というエシカルマーケットはまだ小さいという現実から目をそらしてはいけません。「一人でも多くの貧しい人に仕事を創る」というのが事業の目的であればなおさらです。

そしてもう1つの理由は、僕がバングラデシュで働く工場の人であれば、「かわいそうだから買ってくれた」というのは嫌だから。「君たちの国の貧困をどうにかしたいから、一緒にがんばろう」と言われるのと「一緒に日本の消費者に人気の商品を生み出していこう」と言われるのではどちらがやる気を生み出すでしょうか?僕らがやりたいことは、「援助」ではなく「ともに自立の道を見つけて行くこと」なのです。
この事業のストーリーは、僕らが2011年にバングラデシュに現地視察に行ったことからはじまります。その後、貧しい農村部の女性たちに現金収入をもたらすために養蜂事業を試みたり、ココナッツオイルの事業化したりするなど様々な試行錯誤の末に見つけたのが「牛革」でした。