■AOCが禁じるぶどう品種で作る

12ヘクタールのぶどう畑で栽培されている14種類の品種の中で、ガイヤックのAOCが認めているのは約半分。パトリックさんは、この地方特有の自然なワイン作りを阻害して、平凡な味のワイン作りを強いる時代遅れなAOCを挑発的なユーモアで非難しつづけている。
例えば、16種類のワインの中で一番安いワインがAOC、それ以外の殆どのワインは、その下のランクの「ヴァン・ド・ペイ」(地酒ワイン)になっている。ワインラベルにぶどうの収穫年の記載する場所が規定されているが、それを守らずに例えば2014年を4102年と表示する。ワインのボトルに「たぬきの飲酒お断り」(たぬきはフランスの俗語で馬鹿を意味する)のラベルを貼って、仲間に普及して、現在フランスで約20件のヴィニュロンが導入している。

ワインの価格は、一本10.5~16.5ユーロ(生産元小売価格)。ガイヤックでは高価なワインだが、輸出が全体の8割を占め、在庫不足が続いているが、ワインの品質と自由なライフスタイルを保つために、生産量は増やさない。パトリスさんは、毎年冬期に2カ月間はミャンマーで子どもたちに英語を教え、ヴィルジニーさんは、自宅で近所の人たちにヨガを教えるなど、ボランティア活動にも取り組んでいる。
自由奔放な反逆派ヴィニュロンの真面目なサクセスストーリーである。
