■私たちに身近な生物多様性(19)[坂本 優]
道路の開削や宅地の造成などによって、人工的にできた斜面を法面(のりめん)という。法面は、防災上の観点から、現地の状況等を踏まえ、コンクリートブロックなどで全面を覆うこともあれば、ブロックの枠と砂利やネットなどを組み合わせて崩落や土壌流出を防止しつつ、緑化することもある。

小中学生のころ、学校のバス旅行などで、高速道路や山間部に新設された自動車道路を走ると、窓から見える斜面に、細長いヒゲのような草がよく生えていた。そして、バスガイドさんが、名前とともに、それらの植物が、削られた斜面、すなわち法面の保全と緑化のために植えられたものであること、などを解説してくれた。
新しく開通した高速道路の斜面が、細長く垂れ下がる見慣れない草に覆われている光景は、遠出の興奮とあいまって、地方の子供たちにとっては、社会が高度成長していると妙に実感する光景の一つでもあった。
耳にした植物の名前は、ほぼ全てが横文字の名前だった。つまりは、今、問題になっている外来種だ。高速道路に限らず、宅地造成によってできた斜面の土止めや、堤防などの防災工事現場の法面でも、これらの植物は頻繁に使用された。
法面緑化用の植物については、とりわけ、初期の成長の速さから選ばれることが多く、海外で品種改良された牧草系の草が頻繁に用いられたとも聞く。