2003年5月、「バードサンクチュアリの取組み」で野生生物保護功労者表彰(環境省と(財)日本鳥類保護連盟の共催による表彰制度)を受賞し、「バードサンクチュアリ」という呼称が専門の機関・団体からも「公認」された。三重県からも環境功労賞をもって顕彰いただいた。東京大学大学院の樋口広芳教授(当時)に来場いただき、開設記念講演会を開催したのが2002年4月。以降、足かけ15年、地域の貴重な環境資産として存続している。
開設時の事業所長との約束は果たした・・・・と言いたいところではあるが、当然ながら存続は多くの方々の悩みながらの多大な努力と、この水辺の自然への並々ならぬ愛着があってこそのことだった。
2012年夏、周辺環境の悪化が原因とも推測されているが、サギなどの数が一挙に増えた。
この年、チュウサギの保護活動が「三重県生物多様性保護事業」に認定されているが、その一方で、酸性度の高い大量のサギなどの糞が原因と思われる土壌の劣化などにより、20数本の木々が立ち枯れた。この頃から外来種のスイレンが水面を覆うことによる水質悪化も顕在化した。
悪臭軽減も含めた糞害対策を実施するとともに、翌年3月、枯れ木のチップなどでの土壌改良と並行して、ボランティアによる植樹が行なわれた。植樹会へは募集をはるかに上回る従業員とその家族による申込みがあった旨、お聞きしている。

また、それまで10年以上継続してきた、「人が立ち入らない」という原則を見直し、一定の頻度で人が入ることで警戒心を与え、サギや鵜のある程度以上の営巣の抑制を図るなど、行政や専門家のアドバイスを受けながら、全体として良好な環境を維持しつつ、継続的な保全を目指した試行や取組みがなされている。
雨池町は公害が深刻な折は集団移転もあったと聞く。このバードサンクチュアリは、その隣接地の工場内にあって豊かな生物相を育くんでいる。まさに公害を克服した四日市コンビナートの環境改善を象徴するような場所だ。そして、雨池という地名の由来となった湿地の名残を唯一留める水辺でもある。
地域の貴重な環境資産として、どのような姿、方法で管理するのが望ましいかは見方や立場が違えば意見は異なる。私自身を含め、誰もが満足する形でなかったとしてもいい。
これからも、自然観察の場であるとともに地域の歴史と環境学習の拠点として、工場の諸先輩が営々と築き上げた見事な外周林とともに存続し続けてほしい。もとより、企業として工場として無理のない形で。