東京大学と笹川平和財団は、ノーベル平和賞の有力候補であるコンゴのデニ・ムクウェゲ医師を招き、10月3日~4日の2日間にわたりコンゴ紛争をめぐる鉱物ビジネスや人権に関する講演会を開いた。同紛争は隣国ルワンダの内戦が飛び火して1996年に勃発し、現在までの死者数は累計で約600万人。豊富な鉱物資源は、軍や反政府勢力の資金源となっている。ムクウェゲ医師は、鉱物資源と組織的な性暴力の関係性や取引規制について課題を語った。(オルタナ編集部=小松遥香)
「扉も窓もない宝石店」コンゴの紛争鉱物と組織的な性暴力

資源が豊富なコンゴ東部は「世界のレイプの中心地」と呼ばれる。携帯電話に使われているタンタルや金などの資源産出地では、流通経路の制圧のために、武装勢力や国軍による組織的な性暴力が武器として用いられている。1日で200人以上の女性がレイプされた事例もある。同地域では1996年以降、女性の3人に2人がレイプ被害を受け、犠牲者は40万人を超える。
組織的な性暴力は、身体や精神的なダメージを個人に与えるだけではない。被害者の家族、コミュニティーの誇りや名誉の喪失など個人や集団に根深い傷を残す。
女性が携わる農業や商業などを破綻させることで、鉱山労働への依存をまねくなどの経済的ダメージも与える。人口減少を狙い、子どもを身籠れないほど身体を傷つけることで、地域を支配する目的もある。組織的な性暴力は、安価ながら物理的にも精神的、文化的にも大きなトラウマを残せる兵器なのだ。