
日本のホテル業界におけるCSRやその一環でもある環境対策、そしてサステナビリティに関する意識の高さは、かなりの速度でハイエンドなレベルに達している。これまでは高級ホテルであればあるほど、環境活動をあえて表沙汰にすることに消極的であり、長い期間、多くのホテルはバックサイドで完結させていた。クライアントやステークホルダーも含め一般には、ホテルがどの程度の対応を施しているか、知ることはなかったのである。(ホテルジャーナリスト・せきね きょうこ)
だがここ数年、世界的な地球温暖化や気候変動の極端な現状に端を発し、社会的にも意識が急激に変化し、環境意識が高まっている。欧米のホテルが積極的な啓蒙活動に取り組む中、日本を代表する歴史ある老舗ホテル「帝国ホテル 東京」の取り組みを、優れた一例として紹介したい。
エコに対する取り組みは、特に高級ホテルでは、利用者や顧客から「せっかく高い部屋代を支払っているのに…」と、『過剰な節約』と誤解されるのを避けてきた例が多い。タオルの交換や、使わない部屋の電気スイッチオフ、ゴミの分別など、タブーとは言わないまでも消極的であったことは事実である。
だが、「帝国ホテル」は、以前から丹念に取り組んできたバックヤードでの環境活動を、2016年に「エコマーク認定」という形で発表した。
財団法人日本環境協会エコマーク事務局が制定する「ホテル・旅館Version1」のエコマークを、国内全4軒の直営ホテル「帝国ホテル 東京」「帝国ホテル 大阪」「上高地帝国ホテル」「ザ・クレストホテル柏」の全ホテルで取得したのだ。グループとして全ホテル一括認定授与は国内初となった。