チドリの多くはシギなどとともに、夏鳥として日本に飛来する。もう今の季節、東京湾など東日本一帯に姿を現し始めている。

連休の一日、東京港野鳥公園に出かけ、観察小屋でひと時を過ごした。冬、池を覆うように浮かんでいたカモ類は、ほんのわずかな残留組を残して姿を消し、カワウやサギ類も数を減らしている。
けれども、その分、眼下を行き来するコチドリを、他に気を取られず観察することができた。せわしなく蛇行しながら頻繁に立ち止まり、片足をとんとんと足踏みする。この動きがいわゆる「千鳥足」と言われるものだ。
もちろん、酔っている訳ではないし長旅の疲れのせいでもない。小さな生き物を追いかけ、おびき出しながら採餌している敏捷なハンターの姿だ。そして、時折あたり一面に響く「ピーヨ、ピーヨ、ヒヨヨヨヨ」というさえずり。繁殖期の自己ピーアールもあってか繰り返し聞かせてくれた。東京湾のほとりで、ふと笛吹川の光景や歌碑がまぶたに浮かぶ。

この日は、チュウシャクシギの鳴き声も何回か耳にした。同じように澄んだ、よく響く声だ。コチドリに比べると、より伸びやかに「ビョ~、ビョ~、ビョ~、ビョ、ビョ、ビョ」と私には聞こえた。
千年前に詠まれた和歌と千鳥が、私のなかで東京湾と笛吹川をつないでくれる。当然のことながら、この間、社会と地球環境が持続して来たからこそのことだ。改めてそんなことを考えながら家路についた休日だった。