森づくりの活動をしているというと、「木を植えているんですか」と聞かれることが多い。世の中では森づくり=植林という認識があるのだろう。わが国では、公益社団法人国土緑化推進機構と開催地となる各都道府県の主催により1950年から毎年春に「全国植樹祭」という大きなイベントが開催されている。
植樹祭には天皇皇后両陛下もご臨席され「お手植え・お手播き」が行われる。これをみても“木を植えること”が国を挙げて重要視されていることがわかる。もちろん、これは悪いことではない。しかし、木を植えただけでは森はつくれない、ということはあまり知られていない。

植物の生育に適した気候風土
温暖多雨な日本の気候風土は、植物の生育に非常に適していて空き地があれば何もしなくてもあっという間に草木が生えてくる。「雑草」と一括りに呼んでしまうが、植林木の苗よりも生命力が旺盛で、夏には植えた苗を覆い隠してしまうほど生い茂る。草木だけではなく灌木類もわさわさと生えてくる。広葉樹の切り株からは蘖(ひこばえ)が生えてくる。わざわざ苗を植えなくても、空き地は様々な植物で満たされる。
「植えない森づくり」を提唱されている方もいるくらいだ。もっともこの方法では人間様が望む樹種が生えてきてくれるわけではない。人がこうあってほしいと思い描く森にするには、その樹種の苗を植えることから始める。もちろん、植える樹種がその環境に適したものである必要はある。

日の光を浴びて植物は育つ
さて、植物の定義の一つに「草や木のように根があって場所が固定されている生物」というのがある。また、生態的には「光合成をする生物」という定義もある。植物とは、大まかにはこのようなものという理解でいいだろう。
そして、植物は光合成をすることで生長する。空気中の二酸化炭素(CO2)を葉から取り込み、根から吸い上げた水(H2O)を光の力で合成し酸素(O2)と炭水化物を生成して繊維質をつくり、さらに根から吸い上げた窒素などの栄養分を使って細胞をつくり生育する。
農業や園芸では、作物に水を撒いたり、肥料を与えたりするので、それによって大きく育つというイメージがあるかもしれないが、植物は根から吸い上げる水分と栄養分だけで生育しているのではない。葉に日の光を浴びて光合成をすることが不可欠だ。

下草を刈って苗に光を当てる