◆女性起業家が思い描く夢はコカ・コーラシステムが思い描く夢
〜コカ・コーラシステムの女性起業家支援活動
2017年3月に開催された「第2回 5by20(ファイブ・バイ・トゥウェンティ)女性起業家支援シンポジウム」で、朝山あつこさんは、参加者の視線を一身に集めながら起業の魅力を語った。現在の彼女はNPO法人キーパーソン21の代表理事だが、起業するまでは3人の子育てに奔走する専業主婦だった。彼女を起業に駆り立てたものは、いったい何だったのか。
四十にして惑わず──。ごく普通の専業主婦だった朝山あつこさんは、40歳の誕生日にその後の人生を大きく変える決断をした。「日本中のすべての子どもたちが、自分が将来働く姿を思い描きながら活き活きと毎日を過ごすような社会にしたい」。一人の主婦が掲げるにはいささか大きすぎる目標に向かって歩み始めたのは、身近な場所で起こったある出来事がきっかけだった。
「今から20年近く前のことです。長男が通っていた中学校で、学級崩壊がありました。真面目に授業を受けたい生徒もいるのに、一部の生徒が騒いでいて全く授業にならない。ついには長男が、『高校には進学しない。別にやりたいこともない』と言い出しました。専業主婦であり母親である私の仕事はただ一つ、子どもを育てることだけです。ただ、高校に行かないとなると、それは自立することを意味するので私の役割は終わります。そこで、『自立できるというならこの家から旅立ってもらうけど、どうする?』と問いかけて、彼に考える時間を与えました」
2日後、長男は朝山さんに「高校に行ってみたい」と申し出た。それは彼にとっての新たな一歩を意味した。高校に進学すると決めた彼は、夏休みになると塾に通い始め、教室以外の世界を知ることになる。
「勉強に取り組む同級生たちを見て、『塾で頑張っている人たちもいるのか』と気づいたようです。それまで教室という狭い世界しか見てこなかったから、学校生活はつまらないものだと思い込んでいても不思議はありません」

自分で主体的に考えるようになった長男はその後、目的意識を持って勉強に取り組むようになった。しかし当時の朝山さんは、自分の子どもが前向きに変わっただけで問題が解決したとは思えなかった。学級崩壊が社会問題化しているニュースを見て、日本中で同じことが起こっているのではないかと思い始めたのだ。