今年で8回目となる「『5』のつく日。JCBで復興支援」が2月からスタートした。5月までの「5日」「15日」「25日」にJCBカードを利用すると、買い物1件につき1円をJCBが東日本大震災など災害復興活動に寄付する仕組みだ。東日本大震災の発生した2011年から、復興支援団体をサポートし続けている。もうすぐ7年が経過する東日本大震災はどのような社会課題をあらわにし、地域は今どう向き合っているのか。宮城県石巻市で、子どもたちへの支援活動を行うNPO法人TEDICの取り組みを紹介する。(ライター・瀬戸義章)
■震災を機に地域の課題が浮き彫りに
「震災以前から、深刻な状況の中で、声もあげられずにいた子どもたちはいましたが、東日本大震災はそうした問題を浮き彫りにしたと思っています。私たち大人が、震災以前には気付くことができなかった子どもたちの声や思いに、ようやく気付くことができたと思っています」

TEDICの門馬優代表は、そう語る。石巻市出身で大学院進学を控えた門馬代表は、東日本大震災発生後、現地でボランティア活動を行った。2011年5月にはTEDICを立ち上げ、学校がまだ再開していない中、避難所で勉強をサポートしたり、キッズルームで一緒に遊んだりする活動を始めた。
しかし、避難所などで子どもへの学習支援を続けるなかで、何重もの困難を抱えて、追い詰められている子どもたちがいることを知った。
精神疾患と肝臓病で寝たきりの母親と暮らし、学校に行けず、食事は一日一食の小学4年生。カップラーメンの容器やペットボトル、ティッシュが散乱する自室に引きこもる中学1年生。母親が男を自宅に連れ込み、居場所の無い中学3年生――。
そうしてTEDICの活動は、出会った子どもたちに応じて、「夕食も一緒に食べる」「待つのではなく訪問する」と支援の手を広げていった。
学校に通えない子どもたちのたちの居場所づくり事業「ほっとスペース石巻」は、2011年6月に大阪府のNPOによって運営が始まり、2014年10月からTEDICが引き継いだ。2015年には、「『5』のつく日。JCBで復興支援」の「未来を担う子どもたちに寄り添い、元気にする取り組み」として選定され、支援金は不登校の子どもたちへのアウトリーチや、拠点への送迎のための活動費などに充てられた。
JCBカード利用者にとって「『5』のつく日。」は、JCBカードで買い物をすることで復興支援に取り組む団体を応援できる仕組みとなっている。
■他NPOと連携し活動を深化

TEDICは現在、関係団体との連携を強化しながら、子どもたちへの支援を深化させている。最も追いつめられている子どもたちは、用意している受け皿にたどり着くことすらできない。あるいは、支援を申し出ても本人や両親に拒絶されることもある。
どんな子どもでも受けとめるためには、児童相談所や病院、スクールカウンセラーなどと協力しながら、一人ひとりの状況に合わせてつながっていくことが必要とされ、そうした人材が求められている。
2017年には現地のNPOと共同で任意団体「ユースソーシャルワークみやぎ」(YSM)を立ち上げ、その一環で、現場で子ども支援に取り組む人材が孤立しないために、支援者を育成するための研修講座も開始した。このプロジェクトには、同じく「『5』のつく日。」の支援先であるNPO法人アスイクや公益社団法人チャンス・フォー・チルドレンもかかわっており、こうしてNPO同士がつながり、連携することで復興支援の幅が広がっている。
震災から7年が経つが、子どもたちの状況は混とんとし、様々な形での支援・サポートが必要だ。石巻市教育委員会がまとめた資料(2016年度)によると、被災児童生徒就学援助を受ける小中学生が3000人を超えるなど、経済的に厳しい状況が続いている。子どもたちを巡ってさまざまな課題はあったが、震災はその深刻さに拍車をかけた。
こうした問題を解決するために、TEDICは小学校や町内会・社会福祉協議会とも連携し、月に一度、地域の大人と子どもが一緒に食事を作って食べる「子ども食堂」を開催している。普段は道ですれ違っていただけの両者が、もう一度「出会い直す」ため、「つながり直す」ための機会をつくり出している。
門馬代表は、「地域のまなざしが変わっていくこと」が最も重要だと話す。
「活動をしていて『こんな事になる前に、頼れる大人と出会えていたら』と、何度も痛感します。その子の状況が悪化したのは、昨日今日のことではありません。ぼくたちのような支援組織はもちろんですが、もっと早期に誰かが気付いて、サポートができる地域になっていく必要があります」
行政も企業も市民も、必ずどこかの地域に属している。薄れかけた大人と子どものつながりを結び直すTEDICのような取り組みは、どこの地域にとっても、大きなヒントとなるだろう。