■映画「君の名は。」みたいですね。

北野:その影響もあるのですが、一人称の目線で物語を描くVRならではの演出方法によって、相手と入れ替わる「とりかえばや」の企画をどこかでやってみたいと思っていたところに、「相手の立場になる」ことが重要な「ダイバーシティ」というテーマがうまくはまりました。
■CSRにおけるVRの可能性は。
北野:ニューヨークタイムズなどがVRジャーナリズムにいち早く取り組み、「Journalism 360 Challenge」というVR/ARを活用したジャーナリズムプロジェクトのコンテストが開催されています。
世界中で起こっている貧困や飢餓、環境問題など、国際的な問題を伝えるVR報道には、視聴者の行動を変える力があると思います。SDGsの文脈でも、自分が当事者である意識を多くの方々に与えてくれるはずです。

また、トライベッカ映画祭では、アメリカが制作した原爆投下後の広島を疑似体験するVRが注目されていたのですが、風化させてはいけない記憶を留めるという役割も担っていると思います。ヴェネツィア映画祭やSSFF(ショートショートフィルムフェスティバル)など、国内外の映画祭にVR部門が設立される動きがありますが、今後も高い芸術性と社会性を兼ね備えた作品が出てくることでしょう。
もう少し身近なところでは、子供向けの学習教材(疑似的な社会科見学から、天文学や地学など感覚的にわかる分野など)や避難訓練のシミュレーションなどとしても活用が進んでおり、アクティブラーニングの観点でも効果的だと言われています。新しい技術のわくわくとともに、「なるほど!わかった!」という感動を届けられるのは、とても良いことですね。