以前、NPO法人ネイチャーサービスと信濃町が取り組んでいるプロジェクトを「ITを駆使し自然体験効果の数値化に挑む」というコラムで紹介した。脳波測定により、森林に接した環境で働くと生産性が向上することを実証する取り組みで、2016年から3年間をかけて検証が行われていた。その結果報告会が先日(2019年2月13日)、東京ミッドタウン日比谷であった。

■森で働くことが、生産性向上につながる
森に心身を癒すセラピー効果があることは、すでによく知られている。森林浴を行うことでストレスホルモンが減少し、副交感神経活動が高まり、交感神経活動が抑制される。さらに、血圧や脈拍が低下し、心理的な緊張が緩和され活気が増す。NK活性が高まり免疫能が上がり、抗癌タンパク質が増加するなど、森が心とからだを癒してくれることは科学的にも数々の先行研究で実証されている。
しかし、森の力はそれだけなのだろうか。都会のオフィスで仕事をするより、自然にかこまれた環境の中の方が、仕事の効率が上がると感じている人も多い。総務省の平成30年版 情報通信白書によると2017年の調査では、サテライトオフィス、在宅勤務、モバイルワークなどのテレワークを導入した企業の82.1%(非常に効果があった:28.5%、ある程度効果があった:53.6%)が、労働生産性の向上に効果があったと答えている。しかし、生産性向上を科学的に裏付けるエビデンスは今までなかった。
■脳波の状態を調べることで実証
「信濃町脳波プロジェクト」は、電通サイエンスジャム社の簡易脳波測定器を用いて、森林環境でのリモートワークと都会のオフィスとの脳波の状態を測定し、それを比較することで生産性が高まる科学的なエビデンスを求めようとする実証実験だ。会場には、興味深い面持ちのIT系企業や1部上場企業のビジネスマンを主体とした聴衆が詰めかけ、定員200名のホールが満席になった。来年のオリンピック開催に向けて、国もテレワークを推進している。テレワーク、リモートワークへの関心、あるいはメンタルヘルス、健康経営への関心がとても高まっていることをうかがわせる。
報告会では、冒頭に信濃町の横川正知町長から開会の挨拶があり、続いて「働く人の健康から考える生産性向上」をテーマにNature Service LABのメンバーでもある北里大学 大学院産業精神保健学教授・医師の田中克俊氏、簡易脳波測定器開発メーカーの株式会社電通サイエンスジャム 代表取締役社長 神谷俊隆氏が登壇し講演を行った。それを受けてNature Service LABのメンバーで実際に実証実験を取り仕切ったMomo統合医療研究所・医師 木村理砂氏が実証実験の結果報告を行った。

■都内と信濃町で実証実験