でも、アパレル産業は、世の中に与える影響が大きいので、アパレル企業がサステナビリティやエシカルと言い続けることが、社会を変えるためにも大事だと思っています。
――グローバルでは、ミレニアル世代(1981年~1995年)やZ世代(1996年以降)はほかの世代と比べて社会課題への関心が高いと言われています。日本の若者をどう見ていますか。
石川:エシカルの認識に関しては、世代ごとに違いがあると思っています。学者や専門家は別として、70~80代はほとんど関心がないですね。50~60代は経営者だけが関心が高く、専務クラス以下の関心は低いです。
20代後半~30代はごく一部だけが高いですが、そのボリュームは少ないですね。やはり、一番関心が高い世代は、10~20代前半だと思います。
――企画したCMも10~20代の「Z世代」をターゲットにしたということですか。
石川:はい、そうです。一方で、若い親層もかなり意識はしました。例えば70代にいまから意識改革を促すことはかなり難しい。でも、30代前半の親の意識改革は可能だと思っています。
――企業CMを打つためにかなりの広告予算を費やしたと思いますが、元は取れそうでしょうか。
石川:過去のキャンペーンを振り返ると、2010年に宮﨑あおいさんに出演していただいた時は、売上高が前年比120%上がりました。キャンペーンの途中から宮﨑あおいさんの印象が効いて、「earth music&ecologyは若者向けブランド」というイメージが世の中に定着しました。

2015年くらいには、親子で買い物に来ても、娘だけ店内に入り、親は外のベンチに座って待っているという現象が起きました。売り上げを上げるために始めたテレビCMですが、その後、多様な世代にリーチしていく戦略に変えました。
2017年には、鈴木京香さんに母親役でCMに出ていただき、親子向けブランドとして訴求するコミュニケーションに切り替えました。こうしたことで、客数が伸び、「earth music&ecology」が300億円規模に成長しました。
このように「若者」や「親子二世代」などタイミングに合わせてターゲティングを変えてきましたが、いまエシカルを訴求している理由は、改めてブランド理念を伝えることで、エンゲージメント(長期的な関係性)の高いロイヤルカスタマー(優良顧客)を増やしていきたいと考えているからです。
「安いから買ってもらう」ではなくて、ブランドの取り組みや姿勢への共感を期待しています。そのことで売価も高めに設定できるのです。この方向性で3年間、広告キャンペーンを行い、理念共感型の顧客をつくることをKPIに設定しています。
サステナブルへの意識が高いのは「経営層と学生」