
「GO Electric」(フォード)、「Soul Electrified」(ポルシェ)などEVを前面に打ち出したメッセージがモーターショー会場のあちこちに掲げられる中、フォルクスワーゲン(VW)は、7年ぶりのEV「ID.3」を発表しました。
最大の特徴はその航続距離です。電池ユニットの拡大によって最大550キロメートルとするなど、これまでEV普及の足かせになっていた「価格の高さ」「航続距離の短さ」「充電時間の長さ」という3つのハンディキャップを克服しつつあるように見受けました。
ホンダの新型EV「Honda e」も会場で大きな注目を集めていました。航続距離は最大220kmと「ID.3」には及びませんが、5画面フルワイド・ディスプレイや、AIによるサポートなど、未来のクルマを予感させます。ホンダも2025年までに欧州で販売する乗用車をすべてEVもしくはハイブリッド車に転換することを表明しました。
これまで「来る」と言われてなかなか来なかったと「EV時代」ですが、フランクフルトモーターショーを見る限り、ようやく世界が動き出した感があります。この変化を後押しするのが「環境」「社会」「経済」の「トリプルボトムライン」です。
第一の「環境」では、2015年の気候変動枠組条約締約国会議で採択した「パリ協定」によって、今世紀後半には実質的な「カーボンニュートラル」を求めています。世界の主要自動車メーカーはすでに、「2050年カーボンニュートラル」をコミットしました。
第二の「社会」は、環境面における「社会的な意識の変化や規制の強化」があります。EU(欧州連合)は各自動車メーカーに対して、2020年までに走行1キロ当たりのCO2排出量を現行の130グラムから95グラムにまで減らすことを求めています。EU規制をクリアできるのはEV、ハイブリッド、燃料電池車などだけとされています。
最後の「経済」としては、環境や社会が変化することで新たな市場が生まれる可能性があります。ESG(環境・社会・ガバナンス)投資が世界に広がる中、上場企業にとって自社のCO2排出をできるだけ下げたいという思惑が生まれました。