
暮らしの中の小さなアクションから
次に登壇した野村 蘭さんは、2017年からInstagramを使って自らが実践しているゼロ・ウェイスト生活に関する情報を発信している。リサイクルも大事だが、まずゴミ自体を出さないようにすることが重要と説く。
買い物のときはマイバッグを持つ、マイカップやマイボトルを持つ。野菜なども農家からプラスチック包装をしていないものを購入する、調味料などはリターナブルなガラス瓶入りのものにするなど身の回りの生活でできる限りゴミを出さないようにしている。また、衣類や家具などもフリマアプリを活用して中古品をなるべく利用する。
まったくゴミを出さないのは現代の都市生活では難しいと思うが、ちょっとした日々の気づかいでゴミを少なくしていくことはできる。国や行政がやらないのであれば、個人で対策していくしかない。
ゼロ・ウェイストのヒント満載の野村 蘭さんのInstagram
https://www.instagram.com/zerowaste.japan/

ブログで人々をインスパイア
そして最後はフィンランドからユリア・デガースさんのビデオプレゼンテーション。質疑応答はインターネット回線を使ってリアルタイムで行われた。デガース氏はフィンランド最古の町として知られるトゥルク市に住むスウェーデン系フィンランド人の女性でブロガーとして持続可能な暮らしについて情報発信を行っていて著作もある。
プレゼンテーションのビデオは彼女の家の中で撮影され、持続可能社会実現のための日々の暮らし方などを説明してくれた。彼女は11歳のときに気候変動によって、氷河が融け、ホッキョクグマが絶滅しそうだということを知り大きなショックを受け、地球を救うことを自分のミッションにしようと決めた。
彼女の発言で印象に残ったのは「反対意見もちゃんと聞いて、その意見を尊重できるかどうか考えることが大切」と述べていたことだ。柔軟に対応すし、つねにオープンマインドであることがスウェーデン系フィンランド人の持つアイデンティティなのかもしれない。物質的な豊かさのみを求めず、地球にやさしい暮らしを実現することがグリーンなライフスタイルなのだろう。それは日本の「足るを知る」という言葉に近い考え方だと感じた。
ユリア・デガースさんのブログ(スウェーデン語と英語)
https://www.groniabo.fi/
一人ひとりができることから始める
日本では、戦後の経済復興を経て消費拡大が叫ばれ、「消費は美徳」という言葉がもてはやされた。必要以上の便利さ、華美さ、豊かさを求め、そのために身を粉にして働き、所得を倍増させることが生きがいと思っていた。こうした今までの“常識”は、これからの“非常識”と考え、パラダイムをシフトさせるべきだろう。
日本の政府や行政、大手メディアは、こうした問題に関する意識が残念ながらとても低いと言わざるを得ない。様々な環境問題に関する情報のうち、私たちが知ることができるのは日本語に翻訳されたわずかなものだけである。私たちは政府や行政だけに頼らず、まず自分自身でできる対応をするべきであろう。
地球温暖化による気候変動は、そう簡単に止められるものではない。しかし、今まで当たり前と思っていた便利さや豊かさを追求する暮らし方を見直すことで、未来への舵を少しでもよい方向に切ることができるはずだ。それには、視野を広げ、身の回りのできることから始めるべきだと気づかされた。