社会課題をビジネスで解決する人へのニーズは高まっているが、育成する教育機関は少ない。なかでもビジネス領域から指導できる機関は少なく、これまではボランティアやNPO活動に従事してきた人たちが指導する場が多かった。こうしたなか、2020年4月に社会起業家育成のためのMBAがスタートする。立ち上げたのは神奈川県にある相模女子大学だ。同大学大学院社会起業研究科の金森剛研究科長に聞いた。(オルタナ総研プロデューサー=野村尚克)

――なぜ相模女子大学が社会起業家を育成するMBAを立ち上げたのでしょうか。
相模女子大学は明治33(1900)年に創設された日本女学校を母体とした教育機関で100年以上の歴史を誇ります。幼稚部から大学院まであり、少人数教育を実践していることで知られていますが、実は地域貢献で高い評価を得ていることはあまり知られていません。
「大学地域貢献度ランキング」(日経グローカル)では全国の女子大学の中で7期連続の一位に選ばれており、それに取り組んできた教員を中心にMBAを立ち上げました。
教員の多くは実務経験を持ち、キャリアの途中から大学教員へ転身しています。よって、実務と理論の双方から指導ができますが、実際に社会課題の解決に取り組むことは容易ではありません。そこでまずは学部生たちと一緒に地域の課題解決に取り組みました。
地域協働活動は新潟県佐渡市、福島県本宮市、福岡県糸島市など各地で展開しています。
そうしたところ一定の評価を頂くようになれたのですが、活動を通じて一時的なものだけではなく、社会課題をビジネスで解決できる専門人材を求めていることを知りました。
それは言い換えれば社会貢献活動の一環としてのボランティアというレベルではなく、本業として取り組む人材です。そこで、社会起業家を育成することを目的にしました。

――どのような教員がいるのでしょうか。
私の前職は野村総合研究所でコンサルタントをしており、経営戦略やマーケティングを専門としていますが、ほかには世界最大手の格付け機関で事業会社や公的部門の格付をしていた人。少子化と働き方改革の専門家や大手旅行会社でインバウンド専門会社を立ち上げた人。CSRやESGなどのソーシャル領域を専門とする人や事業承継やM&Aを専門とする弁護士や公認会計士などがいます。
――経営領域に寄った人たちで構成されていますね。
社会起業家は社会課題をビジネスで解決する人なので、ビジネススキルを高めることを重視しました。それは各地で出会ってきた人も関係しています。社会課題に取り組む姿勢や想いを強く持っていても、いざそれを解決するビジネスモデルをつくろうとすると上手くいかなくなってしまう。私たちができることはまずはこの部分を補うことにあると考えました。
そこでカリキュラムはMBAの基本である「経営戦略」「マーケティング」「会計・ファイナンス」「技術とオペレーションのマネジメント」「組織行動・人的資源管理」の5つのマネジメント科目を揃え、さらに社会起業家育成のための専門科目やプロジェクト演習で構成しています。
また、実践においては様々な手法や最新のノウハウを習得してもらうために、ベンチャー企業経営者やNPO法人代表者、自治体首長や新規事業開発担当者といった多様な社会起業家によるアドバイザリーボードを設置して講義を受けられるようにしました。