東京都内や福岡市で傘のシェアリングサービス「アイカサ」を展開するネイチャー・イノベーション・グループ(東京・渋谷)は5月11日、雨具メーカーのサエラ(東京・港)と協働し、壊れにくく修理可能な傘にリニューアルすることを発表した。これにより「傘を捨てないシステム」を構築し、年間約5000万本にも上るビニール傘の廃棄削減を目指す。(オルタナ副編集長=吉田広子)

ネイチャー・イノベーション・グループによると、都内で一雨降るたびに、150万人が雨に困り、15万人が傘を買う。日本全体では、年間8000万本のビニール傘が消費され、そのうち5000万本がリサイクルされることなく、廃棄されているという。
同社の丸川照司社長は「傘を買いたいのではなく、『雨にぬれない』ことを求めている。傘のシェアリングサービスで、傘を買わなくても『ぬれない』体験を提供できないかと考えた」と経緯を説明する。
「アイカサ」は1日70円で傘をレンタルできるサービスで、2018年12月に開始。現在、10万人近い利用登録者がいる。設置場所は、都内全域と福岡市での展開を合わせて、飲食店やコンビニ、駅や公共施設など850カ所ほどに上り、利用者はどこでも返却できる。
今回、「循環型ビニール傘」を提案するサエラと協働し、壊れにくく修理可能な傘にリニューアルした。新しいアイカサは、骨が折れたら取り替えることができ、傘布が破れても張り替え可能。金属を使っていないため、さびて汚くなることもない。グラスファイバー製で強い風でも折れにくくなった。
同時にアプリもアップデートし、雨が降りそうなときは利用者に事前に通知し、アイカサの設置スポットを案内する。こうした一連のサービスをアップデートすることで、傘を捨てないシステムの構築を目指す。
丸川社長は「サービス開始以来、もっと環境に良いことができるのではないかと考え続けてきた。いまは何よりも命が大事だが、新型コロナウイルスの感染状況が落ち着けば、環境に対する意識も高まるはず。これからの傘の消費のあり方をつくっていきたい」と意気込みを語った。