欧州のプラスチック業界が4月、「脱プラスチック」の動きを遅らせるよう欧州連合(EU)に圧力をかけたことが分かった。新型コロナウィルスでプラスチック需要が高まると見たようだ。2019年に成立した「使い捨てプラスチックを禁じるEU指令」について、加盟国が国内法を整備する期間を延長するよう要求したが、EU側は拒否した。(パリ=オルタナ編集委員・羽生のり子)

EUが2019年6月12日に公布した「脱プラスチック」指令は、使い捨てのプラスチックの皿、カトラリー、ストロー、マドラー、綿棒の芯、発泡スチロールのコップと食品容器などを禁止するものだ。
プラスチックボトルの原料の4分の1を2025年までに、3割を2030年までにリサイクル済みプラスチックにすることも義務付けている。加盟国は2021年7月3日までに、指令の内容に合わせて国内法を整備しなければならない。
しかし、新型コロナウィルスの蔓延で、感染防止のためプラスチックの需要が高まった。医療の現場ではおびただしい数の使い捨て防御具や備品が使われている。
新型コロナ危機を背景に、欧州プラスチック加工業者協会(EuPC)が4月8日、EU委員会に手紙を送った。プラスチックは感染予防に有効で、衛生的で安全なものだと述べ、EU加盟国が指令に合わせ国内法を整備する期限を少なくとも1年は延ばし、使い捨てのプラスチック製品の禁止をすべて撤廃するようにと要求した。
法案が起草されたとき、「EU委員会は使い捨てプラスチックを禁止または減らすことが衛生上どんな結果をもたらすかを考えていなかった」と非難し、国内法を整備する期限が延期されれば、使い捨てのプラスチックが出回るので、加盟国は新型コロナウィルスとの闘いにおいて、より緊急の措置にフォーカスできるだろうと主張している。
しかし、EU委員会はこの要求を拒否した。欧州関連のニュースサイト「ユーラクティヴ」(本社:ブリュッセル)によれば、EuPCの手紙について質問されたEU委員会のヴイヴィアン・ローネラ環境問題報道官は「期限は守られるべき。加盟国は、国内法を整備するのにあと1年ある」と答えた。