■ポイ捨て防止の全国キャンペーン
公共の場が清潔なことで名高いスイスも、近年、ポイ捨ては問題になっている。
何人もの年配の住人から「昔はもっとごみが少ない町だった」と聞くし、実際、政府の統計ではテイクアウト用のプラスチックパッケージだけでも推定で毎年約2700トンがポイ捨てされている。
コロナ禍であろうとなかろうと、ポイ捨てを減らすには人々の意識を変えることが大切だ。
IGSUは2007年から毎年全国を回り、通行人にポイ捨てとリサイクルについて啓発している。IGSUはロックダウンのために中断していたこのキャンペーンを、6月24日に再開した。
自分の町をきれいにしようと自主的にごみ拾いを行う人たちもいる。チューリヒ湖沿いのアドリスヴィル市(人口約2万人)では、「ごみクラブ」の会員(年会費2800円)たちが毎月1回ごみ拾いをしている。
6月13日にはロックダウン後初めてのごみ拾いが行われ、110リットルのごみ袋9個と大型のごみ箱1個という大量のごみを収集した。7月4日には、同ごみ袋5個のほか、キックボード、木製の引き出し、ホットプレートなども回収した。
■マスクのポイ捨てが増えるか

IGSUの全国キャンペーンは、ロックダウンで乱れたマナーが少なくともロックダウン前の状態に戻る手助けになるかもしれない。
一方、スイスでの公共交通機関内でのマスク着用義務化により、マスクのポイ捨てがさらに増える可能性が出てきた(スイスの公共放送局によると義務化前の着用率は5~10%だった)。
マスクの義務化以来、以前よりもマスクのポイ捨てが増えている様子が報道されている。筆者もチューリヒ中央駅で何度かポイ捨てされたマスクを見た(写真参照)。
7月に入り、スイスの学校や多くの企業は夏休みの時期に入った。今夏は、コロナ禍で国外旅行を控えて国内で過ごす人たちが多いと予測されている。使用済みマスクがごみ箱にきちんと捨てられ、自然のなかで過ごしたらごみを持ち帰るようにしてほしいと願う。
なお、使用済みマスクのポイ捨ては「新しいタイプの公害」として、すでに世界各地で目立つようになっている。道に捨てたマスクが雨風で川や海へ飛ばされて、水中にマスクが留まることも報告されている。