温暖化を助長する畜肉

各代替肉メーカーとも、企業活動の目標は共通している。人々の健康と動物福祉の向上、環境保全だ。これが、人々のニーズにマッチし、ブームとなった。
インポッシブル・バーガーのように、企業使命の第一に環境負荷抑制を挙げるところもある。畜産が環境にもたらす悪影響は明らかだからだ。FAOによれば、同業界から排出される温室効果ガス(GHG)は、人間による全排出量の 14.5%を占める。ほかにも森林伐採やエネルギー消費、土壌・水質汚染などの問題を引き起こす。
2社の代替肉は畜肉と比べ、GHG排出量を約90%削減できるという。土地利用や水の使用量の面、水質汚染の面でも、90%前後の抑制が可能だそうだ。
畜肉に代わるものとして期待される一方で、代替肉にも大きな課題がある。それは生産量だ。バークレイズによると、現在代替肉は、世界の全食肉生産量の1%にも満たない。気候変動抑制に効果をもたらすには、生産量の増加は必須。ビヨンド・ミートも、インポッシブル・ミートも増産を重要視する。ビヨンド・ミートが上場したのは、資金調達をし、生産量を増やすためだといわれる。
この先の消費者動向も気がかりだ。市場調査を行うNPDグループによれば、代替肉ハンバーガーを今年購入した消費者の98%が畜肉も食べるとしている。代替肉の売りはまだ「目新しさ」にある。日常的に食卓に上る食品として定着し、消費量・生産量ともに伸びれば、環境保全に効果を発揮する可能性は大きい。
*雑誌オルタナ58号(2019年9月30日発売)「世界のソーシャルビジネス」から転載