■世界のソーシャルビジネス 欧州編 フランス

難民たちが作る母国の家庭料理のケータリングサービスがパリで話題を呼んでいる。ミレニアル世代の若者2人が2年前に起業したのが「レ・キュイスト・ミグラトゥール」(移住した調理師)だ。「本物の味」が人気で、大企業のリピーターが相次いでいる。2018年11月からは、パリ18区の文化施設のカフェでも料理を出し始めた。(パリ=羽生 のり子)
難民たちの料理の才能を発掘し、ビジネスにつなげたのは、ビジネススクールで同級生だったルイ・ジャコ氏(31)とセバスチャン・プリュニエ氏(31)だ。卒業後、それぞれ会社勤めをしていたが、社会貢献できるビジネスを始めたいと思い、ひらめいたのがこの仕事だった。
目的は「難民に対する世間の視線を変えること」。ヨーロッパには地中海を渡って危険な旅をし、命からがらたどり着く難民が後を絶たない。創業者の2人は、難民を犠牲者あるいは自分たちを脅かす存在と見なす風潮に疑問を抱いていた。「難民は社会に豊かさをもたらしてくれる」と主張し、五感に喜びを与えてくれる料理でそれを実感してもらおうとした。
もともと料理が好きだったジャコ氏は、起業を決意してから調理師の国家資格を取ったが、「最初は難民のこともレストラン業のことも知らなかった」と言う。
調理師は、難民支援のNGOやフェイスブックを通して募った。プリュニエ氏は、採用の際に「料理の才能だけでなく、皆と一緒にやっていける人かどうかもチェックした」と説明する。
10人の調理師が社員に