デザインはクールに

ドイツ出身のマイヤー氏は9歳でスノーボードを始め、プロになろうと決めた。
10代後半にスイスでトレーニングを積み、夢をかなえた。しかし、約20年前の21歳のとき、試合中の事故で車イスの生活となった。
ホイールブレーズの開発のきっかけとなったのは、雪のある美しい場所へ出かけたときのことだった。誰かに車イスを押してもらうのは嫌だったし、雪深いとどうしても入って行くことができなかった。
「障がい者は町の中だけでなく、自然の中も自由に動き回りたいはずだ」。そう考えたマイヤー氏はありったけの資金をつぎ込んで、素材探しやデザイン決めを進めた。
自身の経験から、リハビリ器具は全体的に機能重視で、洒落たデザインが少ないと感じていたため、自分の製品は障がいのあるなしに関係なく、誰もが使ってみたいと思えるデザインを目指した。製造には、障がい者施設の人たちもかかわっている。
「初めは、とにかく弱者に役立つ製品を作りたかったのが、徐々に、起業家として生きて行こうという気持ちが芽生えた。プロスポーツの世界とは離れたが、自分は正しい選択をした」と自信に満ちている。同社では、第3の製品「セーフティー・フット」も販売している。これは、手持ちの杖に装着する足で、雨、雪、石、砂、葉などあらゆる表面上で使っても滑らず、高齢者にも優しい製品だ。
*雑誌オルタナ59号(2019年12月17日発売)「世界のソーシャルビジネス」から転載