中井環境次官:地域循環共生圏で「質的な成長」へ

炭素の価格付け 有効なナッジに

─7月の就任会見では炭素税の必要性を強調していました。その意図は何でしょうか。これからの時代、サステナビリティの流れを加速するためには、お金の流れを変えていかないといけないと考えています。環境省がESG金融に力を入れているのもそれが理由です。

大手金融とはハイレベル・パネルで議論したり、地域金融には地域循環共生圏で描いた曼荼羅(まんだら)を見せたりしています。彼らと話すほど、「国として脱炭素社会に向かう指標がほしい」と言われるのです。その期待に応えるために、炭素の排出は割高ということを発信する必要があるのです。

2012年に導入した温暖化対策税の税率はガソリン1リットル当たりに換算すると0.76円程度ですが、今後は気候危機と感染症のリスクが同時に高まっていくでしょう。

環境省としては、カーボンプライシング(炭素税、排出量取引など)を各方面が裨益できるスキームとして設計し、社会に実装したい。ですが、今はコロナ禍で経済が大きな影響を受けているので、時期は慎重に見極める必要があります。環境と成長の好循環に向けて大いに議論することが重要ではないでしょうか。

レジ袋の有料化で、コンビニではレジ袋を辞退する人の割合が7割になりました。このことにより、環境意識を持つ人が増え、行動経済学でいうところのナッジ(自発的に動く動機)になったと認識しています。カーボンプライシングも一種の「ナッジ」になりうると期待しています。

森 摂(オルタナ代表取締役)

森 摂(オルタナ代表取締役)

株式会社オルタナ 代表取締役。東京外国語大学スペイン語学科を卒業後、日本経済新聞社入社。編集局流通経済部などを経て 1998年-2001年ロサンゼルス支局長。2006年9月、株式会社オルタナを設立、現在も代表取締役。前オルタナ編集長(2006-2025)。主な著書に『未来に選ばれる会社-CSRから始まるソーシャル・ブランディング』(学芸出版社、2015年)、『ブランドのDNA』(日経ビジネス、片平秀貴・元東京大学教授と共著、2005年)など。武蔵野大学大学院環境学研究科客員教授。武蔵野大学サステナビリティ研究所主任研究員。一般社団法人サステナ経営協会代表理事。日本自動車会議「クルマ・社会・パートナーシップ大賞」選考委員。公益財団法人小林製薬青い鳥財団理事

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