普段は見えにくい場所へ

チューリヒで「アルコールや薬物の問題を抱える人たち」ツアーに参加してみた。担当は、ガイド歴4年のダニエル・シュトゥッツさん(40代)。就職がうまくいかなかったことや、事故に遭ったこと、ギャンブルや薬物への依存、ホームレスの経験を話し、多額の負債を返済中であることも隠さず自己紹介した。
弱者用の一時居住施設(泊まらなくてもホームレスの人は無料で食事や洗濯ができ、ネットも使える)、ホームレスの人専用クリニック、各種依存症の人を支援する施設など、計6カ所を歩いて回った。それらは繁華街内にあるが、普段は見過ごしていた。
各施設で、サービスの内容についてシュトゥッツさんが解説し、施設スタッフがさらに説明を加えることもあった。寝室など見学できない場合もあるが、利用している弱者たちがいると肌で感じられる。
参加者たちは積極的に質問し、ツアー後は「こんなツアーは珍しい」「説明がとても上手」「弱者の人たちと向き合えた気分になった」と話していた。市民の側の弱者理解が、より広まっていきそうだ。
*雑誌オルタナ58号(2019年9月30日発売)「世界のソーシャルビジネス」から転載