――消費者庁が発表した2019年度の消費者意識調査では、エシカルの認知度が、2016年度の調査から倍増して8.8%でした。関心層も増えています。この調査結果をどう見ていますか。
エシカルの認知は進んでいると思います。学校教育でもSDGsを扱い始めたので、上の世代よりも若い世代のほうが知っているでしょう。これから日本社会は超高齢化社会になっていきます。2040年には現役世代1.5人で1人の高齢者を支えることになります。
ミレニアルやZ世代はまさにその時代の当事者でもあるので、彼らが社会課題に対して鋭敏になるのは当然なことだと思います。
エシカルだけでなく、エコやフェアトレード、サステナビリティなど社会を持続可能にするための様々なことに関心を持つと思いますが、大事なのは実践できるかどうかです。
悲しいことにエシカル消費に関しては、行動までできているのはわずか一部の層に過ぎません。
――消費者庁として、エシカル消費を実践するためのナッジは何だとお考えでしょうか。
商品の開発に参画することだと思います。エシカルの普及啓発を行う末吉里花さん(一般社団法人エシカル協会代表理事)がエシカル消費をテーマにした絵本を出版しました。日本語だけでなく、英語版も出したのですが、実は、英訳したのは、ICUの大学生なのです。


この絵本の内容に感銘を受けた大学生有志が、国内外に伝えたいという思いで末吉さんに話を持ち掛けたそうです。このように、商品を購入するだけでなく、作り手として参画することで、多感な若者は多くのことを吸収して育つでしょう。
今はコロナ禍でDX化が進んでいます。物理的な距離は問わず、テクノロジーによって、人やモノ、環境との「つながり」を近くに感じられるようになりました。この環境の変化もエシカル消費の後押しになると思います。
伊藤明子:
消費者庁長官。島根県出身。1984年京都大学工学部卒業。同年4月建設省(現国土交通省)入省。2017年国土交通省住宅局長。2018年内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局地方創生総括官補。2019年より現職