農家のこせがれ(息子・娘)を実家に戻す、新規就農希望者を支援する、耕作放棄地を農地に戻すなどで、これからの日本農業の新しい標準を作ろうとしている若者たちがいる。全国の農家を巻き込んだ彼らのネットワーク戦略を聞いた。(聞き手 今一生)=文中敬称略
宮治勇輔(32歳) 養豚農家のこせがれ。株式会社みやじ豚代表取締役。NPO法人農家のこせがれネットワーク代表理事CEO
脇坂真吏(27歳) 農業コンシェルジュ。大学生と農業界の出逢いの場を創る株式会社NOPPO代表取締役。NPO法人農家のこせがれネットワーク理事COO
(本誌オルタナ21号P34からの続き)
――農家のこせがれネットワークでは、丸の内朝大学農業クラスの講義に加えて上級編の農業プロデューサークラスを開催するのですね。

・宮治 はい。これまでの農業クラスでは農業に関心のある方々に浅く広く農業について知ってもらい、農業に関心を持っている人同士の仲間づくりに役立ててもらいたいという思いで開催していました。
上級編の農業プロデューサークラスでは、さらにふみ込んで、群馬県川場村と六本木を舞台に農家さんの課題をくみ取り、実際に農業プロデュースを行っていただきます。
対象は農業ですが、プロデュース力というのはどんな業界にも必要なノウハウになります。この講座を受講することでより深く農業の世界に入り込み、実際の仕事でも活かせるプロデュース力を磨いていただきます。
都心で働きながらも、農業との接点を持てる、もしかしたら農家のこせがれも実家に戻ることなく実家の農業をプロデュースする人が出てくるかもしれませんね。
脇坂 農業プロデューサークラスでは、農業プロデューサーの役割やブランディング、農産物の販売戦略について学んで頂き、実際に川場村の農家さんをプロデュースして頂きますが、それには農家のこせがれネットワークの構築してきたプラットフォームを活用していただきます。
農家やこせがれが使用するだけでなく、農業に関心のある方にもかかわっていただけるからプラットフォームなんですね。
――また、「農家のこせがれ交流会」や「農家のこせがれネットワークBBQ」というイベントも行っているようですね。
宮治 自身の生産した食材を食べてもらいながら、農家でない人も含めたいろんな人と直に交流できる場として、生活者にとっては、農家やこせがれの食材を美味しく食べながら楽しく応援する場として、もっともっと気軽に気楽にみんなでREFARMできる場所やきっかけを作りたい。そんな想いから交流会やBBQをやっています。
脇坂 こせがれ交流会の様子などはこせがれのブログや僕のブログにも載っています。なお、ネットワークに参加した全国の農家からも、同じようなイベント情報が届きます。そうした情報はメルマガで随時紹介していますので、まずは登録してみて下さい。
――宮治さんたちが2009年から全国各地で講演を行ない、それらの場所に地元の生産者コミュニティが生まれ、それがネットワークになってきた成果が六本木農園FARMやヒルズマルシェなどに結実していくと、どんどん仲間が増え、今後大きなうねりになっていくような気がします。
宮治 これまで語った以外にも、農家と生活者が直接つながり、パートナーになることができる「パートナーシップファーム」という試みも始めています。テイケイやCSAの、農家のこせがれネットワーク版です。
少し大げさに言うと、生活者には農家のお友達をつくって頂きます。農や食について困ったら相談できたり、農作業のお手伝いに行けたり、そういう関係を構築して、相場や天候のリスクに左右されない安定した農業経営を生活者と一緒になって作り上げることができればと考えています。

脇坂 このパートナーシップファームを体現する「マイファーマー」というサイトも立ち上がりました。全国に散らばる我々の仲間である個性的な農家さんに登録してもらい、生活者は登録された農家から気に入った農家を選んで申し込みます。
メールや農業体験を通じて作物の成長を見守りながら農家さんと仲良くなって、時期が来たら収穫物が届くという仕組みです。これから順次、農家さんの登録が増えて充実してきますよ。
――農家だけでなく、消費者もうれしくなる話を、ありがとうございました!