老舗寿司屋がMSC認証クロマグロを買ったワケ

このG20の昼食会の成功をきっかけに、手塚さんは後日、ニューヨークの国連本部で開かれた海洋保全をテーマにしたイベントの場で、サステナブルな寿司ケータリングを企画展開することとなった。現地に赴いて、地球にやさしいサステナブルなシーフードリスト「ブルーシーフードガイド」に準じた寿司を握る経験をしたという。こうした海外の人たちとの交流を通じて、魚文化に精通した日本の漁業や食文化の素晴らしさを、もっと世界にPRするべきだと感じていると話す。

9月に初出荷されたMSC認証取得済みのクロマグロ

「日本の多くの漁師さんはサステナビリティの精神を持ち、代々誇りを持って漁業に携わっている。その素晴らしい水産業や魚文化、サステナビリティの意識をきちんと伝えるべきだと思う」と話す手塚さん。今秋、世界で初めてMSC認証を受けた冷凍の大西洋クロマグロを店で提供することにしたのは、「自然な流れ」だったという。今後は松乃鮨だけでなく、国内外のSDGsや海洋保全関連のイベントケータリングでも、このクロマグロを提供する予定だ。

現在はCoC認証(製品の製造・加工・流通全ての過程において、認証水産物が適切に管理され、非認証原料の購入やラベル偽造などがないことへの認証)に関しても最終合意に至ったという。年明けには晴れて、MSCのCoC認証を取得した寿司店第1号となる予定だ。

MSC認証はイオングループや日本生協連が消費者向けの商品販売を行ったり、パークハイアット東京がMSC認証取得済みのクロマグロをホテルのレストランメニューに加えたりするなどで、日本国内でも認知が広がりつつある。魚を扱う飲食店の代表格である寿司屋でも、今後は松乃鮨に続きサステナビリティを意識した魚を取り扱う店が増えていくことを願いたい。

teramachi

寺町 幸枝(在外ジャーナリスト協会理事)

ファッション誌のライターとしてキャリアをスタートし、米国在住10年の間に、funtrap名義でファッションビジネスを展開。同時にビジネスやサステナブルブランドなどの取材を重ね、現在は東京を拠点に、ビジネスとカルチャー全般の取材執筆活動を行う。出稿先は、Yahoo!ニュース、オルタナ 、47ニュース、SUUMO Journal他。共同通信特約記者。在外ジャーナリスト協会(Global Press)理事。執筆記事一覧

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